終わりで始まる進化論~第一部~
狙いは羽の付け根部分、ナツキは足場を蹴って空気抵抗に逆らっていく。背後から狙いを定めるとナツキは踵から蝶の羽へと一気に足を振り下ろした。
「ぐっ……う、か、硬い……!」
優雅に広げ自在に操る羽は昆虫の蝶であるならば柔らかい場所である。
シュタールアイゼンを装着していても、膝に痺れが伝わる程に羽の付け根に足が入り込んでいかない。
助走をつけての破壊でも千切れないのは予想外だった。おまけに、毒粉の直ぐ傍なのだ。
金粉が口から容赦なくナツキの体内に入り込んで肺を侵していく。
「くっ……一旦離れ……」
羽を千切れないならば、一度距離をとった方が浴びる毒も少量で済む。ナツキが一度足を外そうとした時だった。
女の首があり得ない方向まで曲がり、背後にいるナツキに気付いたようだ。
「しまっ……!」
気づいて逃げようとしたが既にセカンドタイプの射程距離内にナツキはいる。
アリスを締め付けた触覚が再び獲物を捕らえるためにナツキの太ももへと絡みつく。
締め上げられる太ももだったが、ナツキの場合はそれだけでは終わらなかった。
触覚の先端が太い針の形状へと変化すると、ナツキの左太腿を一突きで貫いたのだ。
「ぐ、うああああっ!」
「ナツキ君?どうしました?ナツキ君!」