終わりで始まる進化論~第一部~
「……ツ!ナツ!」
遠くで聞き覚えのあるような声がする。誰だっけ?凄く怒っている、馴れ馴れしい声。
懐かしい……?訳じゃないけれど、絶対に負けられないと本能がその声に反応する。
「役にたってねえくせに、暴走してあっさり戦線離脱してんじゃねえよ!このドヘタレ!」
威勢のいい怒号と挑発的な言葉、傍で聞こえる発砲音にナツキの意識は再び現実世界へと戻って来た。
「し……の、みや……?」
ナツキの意識はその声によって覚まされる。貫通した管の様な触覚を自分の手で握りしめる。
掌が自身の血液で赤く染まっていくが、滑らないようにしっかりと触覚を捕らえていた。
アリスを攻撃した触覚は必然的に元の頭部へ戻っていくのをナツキは知っている。
最後の賭けだが、やるしかない。
「戦線……りだつ……なんて、する……わけない、よ」
ナツキの体は勢いよく触覚に引きずられ始めた。本体の蝶が触覚を戻すためである。
シュタールアイゼンの硬さを頼るしか方法は無いが、力の入らない足を何とかセカンドタイプの首筋に狙いを定める。
引き戻される勢いの空気抵抗に顔の筋肉が固まりながらも、首筋に近づいていく。
頭を吹き飛ばすつもりでいた。が……シュタールアイゼンは、突如そのライトブルーの輝きが切れる。
「操縦者(マスター)を認証出来マセン……シュタールアイゼン、シャットダウンシマス」
女性の機械音が無慈悲にもナツキの戦闘不能を告げるのが早かった。