終わりで始まる進化論~第一部~
ノア達が撤退したのはナツキが意識を無くしてから暫くしてからの事だった。
本部には羽柴とアリスが居るものの、アリスの方は相方に付きっきりなのか出迎えたのは羽柴のみだ。
ナツキは彼の指示通りに彼の部屋に一度運び込まれ、シノミヤやノアはナツキの部屋から退出させられた。
暫くして神妙な面持ちの羽柴がシノミヤを別室へと連れてからずっと音沙汰がない。
ナツキが意識を取り戻したのは、それからまた数時間経過してからの事だった。
重い瞼をゆっくりと開くと、学校でもなく真っ青な空でもない天井に一瞬どこなのか理解できなかったが、現在身を置いている自身の部屋だと分かり上半身を起こす。
「寝てたら?あんた、相当やばい怪我したって聞いたわよ」
傍から聞こえてきた声にナツキは驚いた表情になってしまう。
「か、春日井さん!何で……」
アリスはばつが悪そうな表情を浮かべながら、いつもの怒鳴り声とは遥かに違う小さな声で呟く。
「あんたの怪我は、あたしの責任でもあるでしょ……あたしが」
「俺が失敗したんですよ。春日井さんのせいじゃないです」
それはナツキの本心だった。
勝手に暴走し勝手に戦線離脱する所ではない。戦闘不能になって同僚に更なる迷惑をかけたのだ。
羽柴もシノミヤも怒っているに違いない。ノアだって、呆れてしまっているだろう。
アリスをフォローしたものの、笑顔を無理やりに作ってしまったからか、苦笑にしかなっていない。
「そうじゃないわ。そもそも、人間(ノーマル)のあんたに無茶させたのが、あたしのミスよ」
「ノーマル?ノーマルって……どういう事ですか?」
アリスの口にした一言で、ナツキは嫌な予感がした。その括りつけた呼び方には、ナツキとアリスに決定的な違いがあると。
一度視線をナツキに向けていたが、溜息と共にアリスの大きな瞳は深刻さをめいて伏せられる。