終わりで始まる進化論~第一部~
「……あたしは、あんたとは違うの。ノアの事は聞いてる?あたしは、ハーフタイプ。だから、多少の怪我なんて大したことないのよ」
「待ってくださいよ!春日井さんも、人体実験の被験者になったって事ですか!?何で……」
「だったらどうするの!?あんな化け物相手に、生身でどうやって戦えって言うのよ!あたしは、この体になって、ヴェルベットアイを扱えるようになった!ノーマルで居たら、真っ先に食い殺されてたわ!……仕方、ないじゃない」
返って来た言葉にナツキは思わず返す言葉を失ってしまう。
アリスは簡単な決断で人体実験に参加したわけでは無い。ノアだってそうだ。
人体実験だから、何かしらのリスクを負うかもしれない恐怖だってあったのだろう。
彼女の小さな身体は怒りなのか、悲しみなのか震えていた事でナツキは更に胸が痛んだ。
人体実験が間違った方法であることは、ナツキよりもずっとこの場所にいるアリス達の方が良く知っているはずなのだ。
「……すみません」
「謝らないでよ。あんたに謝罪させたくて言ったんじゃないわ。本来はあたしが、あんたを守るべきだったのに」
「俺も、春日井さんを助けようと思ってあの時シノミヤの指示に従わなかったんです。でも、結局春日井さんに怪我もさせて、シノミヤやノアにも迷惑かけて、動けなくなって、こうやって寝てなきゃいけない状態になってる。もっと俺が強かったら、春日井さんも怪我なんて……」
「あんた初めての戦いだったんでしょ?それに、ノーマルだもん」
「ノーマルとかハーフタイプとか、そういう事じゃなくて、俺は春日井さんにちゃんと認めて貰いたかったんです。ちゃんと、守りきりたかった」
込みあげてくるくる情けなさと悔しさにナツキは拳を作ってしまっていた。
大きな口で啖呵をきっておきながら、何も出来なかったのだ。これでは人質よりもタチが悪い。
顔を上げて傍にいるアリスの方へと視線をやると、彼女は何やら驚いた表情を向けてナツキを見つめている。
「春日井さん、どうかしたんですか?」
「へ?な、べ、別にっ、何でもないわよ!本当にそう思ってんなら、さっさと怪我治しなさい!」
彼女の顔が少し赤くなっているように見えるのは気のせいだろうか?
もしかしたら、物凄く怒っているのかもしれない。ナツキの肩は更に重みを増していく。