終わりで始まる進化論~第一部~
疑惑
一方でナツキの部屋を出たシノミヤは会食を済ませ、直ぐに自室へと戻った。
殺風景な部屋のベッドに腰かけ気を落ち着けようとしても、羽柴に呼ばれてからの彼の言葉が頭から離れずにいる。
ナツキが部屋に運び込まれ、症状を確認した羽柴の表情は明らかに様子が変だった。
喜怒哀楽を表情にあまり出す人間ではないが、シノミヤにはナツキの症状が芳しくない事は察していた。
だが、あそこまでの症状とは……。
「壊死!?壊死って……どういう事だ!?」
「お伝えした通りです。ナツキ君の足の細胞の一部が完全に壊死しています。毒針で刺された時に細胞が死滅したのでしょう。腐敗も始まってもおかしくない状況でした」
「死滅って……あいつの武器は足なんだぞ!それがもう使えねえって事だろ?それだけじゃねえ、歩けねえって事じゃねえか!」
シュタールアイゼンの事もあるが、ナツキは唯一のあの学校での生き残りだ。
ごく普通の高校生である人間を再び巻き込み、ほとんど利用する形で協力させている人間が犠牲になったとなれば、やりきれるものではない。
だが、返ってきた羽柴の言葉にシノミヤは更に言葉を失う事になる。
「シノミヤ君、落ち着いてください。話はある種ここからです。確かに最初確認したとき、ナツキ君の足は壊死していました。ですが、彼の足は壊死した後に回復が見られたんです」
「は……?そんな訳ねえだろ。普通あり得ねえだろうが、そんな事!」
「はい、有り得ません。それが<普通>です」
「……!」