終わりで始まる進化論~第一部~
リュカ
アリスが東部へと戻ってからシノミヤも何やら資料作成などに追われているらしく、とにかく本部は忙しさが戻ってきた。
ノアも家事などで忙しくしており、ナツキの部屋の扉の向こうには何回か行き来する足音が聞こえてくる。
まだ完治はしていないものの、動けるようにはなったナツキだが、事務処理は任されないために、とにかくやる事がない。
十代後半動き盛り食べ盛りのナツキにとっては、暇な時間は何より苦痛しかないのである。
「ちょっとくらい歩いても平気だよね、ずっと寝てる方が体に悪いし」
勝手に自己完結させベッドから降りて戸を開けると、資料の束を抱えたシノミヤと鉢合わせてしまう。
「あ、あのさ、俺にも何か手伝うこと、あるかなー?なんて」
「あ?ねえよ。つか、邪魔だ。退け」
予想通りに提案はあっさりと一蹴される。
分かってはいたけれど、完全に今の状態ではお荷物扱いでしかない。
足早に去ろうとする同僚にすら気を使う状況だ。
怪我を負った時はどこか難しい表情をしていたシノミヤだったが、ナツキが少し動けるようになってからは、以前と変わらず完全な役立たず扱いである。
変にしおらしさを見せられるのも気持ち悪いが、気遣いなど微塵もない事も腹立たしい。