誘拐日和



 両親のことを思うと、いっそ笑えてきてしまう。嗚呼、私はいったいどこで間違えたんだろう。


 いつだって私のことだけを考えていてほしい。私以外の全てを断ち切って、私のためだけに息をしてほしい。


 私がどれだけ想っているかをあの人に分かってもらえば、私は愛してもらえると思っていた。


 だけれどそんな執着心をぶつけても、あの人は私を愛してはくれなかった。別れ際、あの人が私に向けた憎悪の眼差しが忘れられない。


 だから今、律を監禁したいとは思っていない。その感情が、普通ではないと知ったから。


 ただ、いつだって彼を独り占めしていたい、律が私以外のことを考えているだけで気が狂いそうになる、そんな執着心は重く私の心に沈んでいる。

 それを解放できたらどんなに楽か。けれど解放してしまったら、律は私のもとから去ってしまう。


 あの人に拒まれたあの日から、私の心には重たい鎖が巻き付いている。それはきっと生涯において、決して消すことのできない呪縛。



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