誘拐日和
「君は善良なんかじゃない。大きな欠陥を抱えているくせに、それを隠して生きている卑怯者だ」
ヒソカの容赦のない言葉が私を穿つ。それがまるで断罪のようだと、思った。
嗚呼、本当に、私の人生は何なのだろう。愛した人にはオカシイと言われて、両親には縁を切られたも同然で、普通になるため必死に隠してきた狂気さえも暴かれて。なんだかだんだん笑えてきた。
そもそもどうしてヒソカが私の過去を知っているの。どうして私をここに閉じ込めたの。
どうして――わたしは、普通には生きられないの?
「そこまで知っているなら、事件の結末だって知っているんでしょう? 私はもう繰り返したくないの……仕方ないじゃない。隠さなければ、私は愛してもらえないもの。それのどこがいけないの?」
異常だと自覚があったところで、生き方は簡単には変えられない。心が変われば人生が変わるだなんて言っても、そう易々と心を変えられないのが人間でしょう。律には愛してほしいけれど、そのために執着心を捨てるだなんて不可能だ。
そんな私の愛し方に欠陥があると言うのなら、普通の恋が出来ないのなら、隠して生きていくしかないじゃない。