誘拐日和
「唯」
律に呼ばれ、ゆっくりと両手を差し出した。ヒソカの手を離れた小さな鍵が、私を戒める手錠の鍵穴に差し込まれる。
これで私は、奪われた自由を取り戻して、律とシアワセな未来を歩いていける――
「やめてッ!」
その事実を認識した途端、私は声をあげていた。
頭から離れないヒソカの笑み。手枷の重み。脳内に過る、ヒソカの蒔いた毒。
――『君を心から愛しているのは誰なのか、ゆっくりと答えを出せば良い』
この手枷は外さない。外せない。それが答えだ。
だってこれは、この鎖は、ヒソカの執着の証。私がずっと望んでいたものだから。