誘拐日和
「ねえ、ヒソカ」
「ん?」
「あなたがただ私を閉じ込めて、昔の私みたいに、ストックホルムの真似事をしようとしていただけなら……あなたが私の過去を知らなければ、私は律のところへ戻ったよ」
“普通”ではないヒソカでさえ駄目だったなら、私のすべてを愛せなかったなら。もう一度律の隣に戻って、表面だけを取り繕って生きていく覚悟は出来ていた。
けれどヒソカが私の狂気を知っていたから、それでも愛すと言ったから。私はその覚悟を破り捨てた。
「私が此処に残ったことを、私に後悔させたら許さない」
あなたが私に言った言葉を、今度は私が贈ってあげる。
「あなたが私を捨てるなら、私はあなたを殺すから」
私に“普通”を捨てさせておいて、ひとりだけ逃げようとするなんて許さない。