誘拐日和
私の言葉に、ヒソカは嗤った。とても甘美に、歪に、そして扇情的に。
「いいねえ、ぞくぞくする」
黒曜石のような色の瞳には、歪んだ歓喜が爛々と輝いていた。
私を抱き寄せてヒソカが交わした口づけは、今までで一番優しくて。まるで神聖な誓いのようだと、思った。重なった熱が愛しくて堪らなくて、うまく息が出来なくなる。
「愛してるよ、唯。この先もずっと唯だけだ」
ずっとずっと欲しかったのは、狂おしい程の甘い愛。私が私であるからこそ与えられる、歪みきった愛しい幸福。
甘美な毒を、肺腑の奥まで吸い込んで。
たったふたりの箱庭で、緩やかに生きていきましょう。
(あなたとわたし、ひとつ屋根のした。)
(愛しい愛しい、歪な幸福が揺蕩うわ。)
【Fin】