誘拐日和
私が捕らわれてもう半月は経つけれど、律はどうしているだろう。きっと、私を心配してくれている。律は心配事があるとプレーが荒くなるから、それで怪我をしていなければ良いのだけれど。
明るくて真っ直ぐで、まるで太陽のように笑う彼。いつも狂気の匂いがする笑みを浮かべているヒソカとは似ても似つかない。
――女の子に人気のある彼と恋人同士で居られるのは、奇跡のようなことだった。
あたたかい光の滲む笑顔も、優しく私に触れる指先も、照れた時に耳朶に触れる癖も、全部が好きで堪らなくて。律のために、私に出来ることなら何だってしてあげたかった。
ヒソカに捕らえられてから、私が外に出られたことは一度もない。この期に及んで、今さら外に出してもらえるとも思っていない。それでも私はどうしても、願うことをやめられなかった。
――ねえ、律。離れれば離れる程、あなたの眩しさが恋しくなる。もう一度、もう一度だけで良い。私の名前を愛しく呼んでくれる、あなたに会いたい。