【短編】俺様先輩に告白
俺様先輩
……見てしまった、私。

「バレンタインなんてくだらねえ」

寒空の下、昼休みの倉庫前。隣の課の女の子が榊さんに小さな包みを手渡すところを。

「受け取ってもらえないんですか」
「もらえるか、ンなもの」

榊さんは彼女の顔も見ずに踵を返す。

あ、こっちをみた。ヤバイ、気づかれた?
私を一瞥する鋭い瞳はちっと舌を鳴らして駐車場へと消えた。

*―*

榊さん。
私の2つ上で今年29歳になる。
広告デザイン事務所の営業部のエース。
俺様で傲慢で言葉遣いも荒く、私たちデザイナーを泣かせている。「あそこの顧客はこれじゃ納得しねーんだよ!」とか「てめえ、俺の話を聞いてんのか!」とか。影で泣いてる人は少なくない。

そういう私も入社当時は泣かされた。あれが違う、この構図は意図が見えない、と。でもそれは仕事に対する熱意の現れだということをしばらくして知った。

誰よりも外回りが好きで。
誰よりも顧客に寄り添う。

マーケティングやデザインの勉強も誰よりも一番にやっている。私はそんな彼を意識するようになった。

それは仕事の先輩だから?
仕事に対する彼の行動を尊敬しているから?

……違う、これは恋心。そう気づくのに時間はかからなかった。
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