【短編】俺様先輩に告白
今日はバレンタインデー。告白すると決めていたのに萎えてしまった。

*―*
20時。気づくと皆は退社して事務所には私だけ。

おなか空いたな。

榊さんにあげるはずだったチョコを鞄から取り出した。奮発して有名店で購入したもの。行き場のないチョコを私は開封して、一粒つまんだ。

「なに、それ」

背後から声がして、私はピクリとはねた。
誰もいないと思っていた事務所。しかもそれは榊さんの声。

よりによって、こんな瞬間!

「なんだよそれ。本命? なんで自分で食ってんの」
「こ、これは自分チョコですよ」
「ふうん? お前、洋酒得意じゃねえくせに? あ、なに、このカード」
「ダメですっ、見ないで!」

そう言い終えたときには榊さんはすでにカードの文字を読んでいた。

“榊さんへ。ずっと憧れてました。好きです”

榊さんは箱を取り上げると自分の鞄へと放り込んでしまった。

「もらってやる」
「でも、受け取らないって」
「……お前からのはもらってやる」

頬を赤くした榊さんに、来月14日空けとけ、たっぷりお礼するから、と耳元でささやかれた。

(おわり)
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