cold tears
「......ルカちゃん、もし、好きな人が出来たら...気にしなくていいからね?...政人の事。」
そんな事...あるはずもない。
「私ね、政人から、ルカちゃんにプロポーズしたって聞いて、凄く嬉しかったの。
......ずーっと妹みたいに可愛がってた子で、私も美瑚もお母さんもお父さんも結婚楽しみにしてた。」
少し間を開けて絵美さんは続けた。
「ルカちゃんは、これからの人生の方が長いの。......政人がいなくなってから心から笑えてる?」
心から......そう言えば最後に笑ったのはいつだっけ。
いつも自然に笑えていたあの頃の面影はもうない。
ただ筋肉が頬を支えている、それだけの行為。
「そんな簡単に言うなって思ってると思うけどね、......政人の事、一番に思い続けなくていいのよ。ルカちゃんはもう十分、政人の事一番に思ってくれてたんだから、ね?」
涙腺が少し緩んだ気がした。でも、やっぱりまだ泣けなくて。
そんな私をぎゅっと抱きしめる美奈さんも震えてて。
美奈さんの方がつらいはずなのに、こんなにも強くてかっこいい。
早く前に進みたい。
少ししんみりとした空気を切り替えるように、美奈さんが持ってきてくれたケーキとシャンパンをテーブルに置いた。
二人で食べる甘いはずのケーキはほんの少ししょっぱかった。