cold tears





「......牧田さんが、ここで私を見た時、あの時、婚約者が亡くなったと連絡を受けました。

雪崩に巻き込まれたって。

慈善事業の一巻として山に行くと聞いた時に何としてでも止めればよかった、とか、もう少し日にちを遅らせればよかったとか、やっぱり私のせいだって。

色々頭をよぎって、何も考えられなくなって......。
彼の遺体はすごく冷たくて、でも思うように泣けなくて苦しかった......。」




思わず手が震えて喉の奥がツーンとしていた。



牧田さんは黙って聞いていた。私の震える手をそっと握りながら。




「そんな中、彼のリュックから唯一無事だったチケットが見つかったんです。

どうしてそんな所に持って行っていたのかは分からないけど、それがGrasshopperのライブ、この前のライブのチケットだったんです。」




彼のお姉さんから見てきなと言われたこと、そしてまた泣けなかったこと、頭に入ってこなかったこと、1つずつゆっくりと話す。




「......まだ大好きで、心の何処かで帰ってきてくれるんじゃないかって思って、この指輪も外せないまま......。」





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