cold tears
全身が痺れたかのように身体が動かない、熱い、もう彼のことしか見えていなかった。
どうしてあの時何も感じなかったのだろう、そう思わずにはいられないくらい、夢中だった。
バーで会ったときのヒロさんとも、一緒にモーニングをとったときのヒロさんでも、私を抱きしめてくれた時のヒロさんでも、好きだと言ってくれた時のヒロさんとも違う、ロックスターの名を背負った1人の男。
誰がなんと言おうと、ステージでギターを弾きながら歌う姿はどのヒロさんよりもカッコよくて、動悸が治まらなかった。
けれど、またあの時みたいに、今さっきまで頭の隅にまで追いやられていた政人の存在が大きくなってきて、苦しくなった。
どうしよう。
さっきとは対照的に頭が真っ白になって、心做しか体温も急に下がっているような気もする。
「大丈夫ですか?」
フラフラと崩れ落ちる私を隣の人が支えてくれた。
大丈夫です、と告げて座った。