cold tears
ガチャリとドアの開く音がすると、そこにはいつもはふわりとした髪が汗でペタンとなったヒロさんがいた。
あっ、と言う顔をして私の手にある花を見た。
「......今日凄く楽しかったです。
......ずっと、忘れてた楽しいとか嬉しいとか...
そんなあったかい気持ちを音楽で...
ヒロさんの...Grasshopperの音楽が......
あの曲が...教えてくれました。
......わたし、またヒロさんに...救われました。
......わたし......ヒロさんのこと.........っ」
ゆっくりと言葉を口にしていた私を彼はグイッと抱き寄せた。
途端にヒロさんの柔軟剤の香りと、ほんのりと香る煙草の匂いに包まれる。
こんなに人の腕の中は温かいものなのか。
なぜこんなにも安心するの?そう思いながら彼の背中にそっと腕を回した。