僕は、まだ愛を知らない
僕はこの春、高校生になった。
物心ついた頃から、” 父と子 ” という
所謂父子家庭で育ってきた。
小学校や中学校で ” 母親が居ない ” といった事実を知る者は極限られた人達だけだった。
先生達に迷惑をかけることをするわけでもなく、父に迷惑をかけるわけでもなく、我儘を言って困らせるわけでもない。
至って真面目に生きてきた分、干渉されることもなく自由に生かせてもらっていた。
母親の代わりといってはなんだが、父の姉がよく家に来てご飯を作ってくれる。そんな平凡な家庭で育ってきた。
だからか、別に母親が居ないから、と言ったところで虐められる事もなかった。
僕に母親が居ない事を知らなかったのではなく、僕の叔母をみんなが母親だと思っていたのに違いない。