無駄チョコ
なのに、何かのはずみで自分の気持ちを伝える勇気が湧くかもしれないって毎年用意してた。

今年渡せなかったら3年目の無駄チョコ。

こんな調子で勇気なんて湧くわけない。

小さくため息をついた時、

「甘い物は無理だけど、」

あいつが頬杖をついたまま珍しく真面目な顔で私を見つめていた。

「気持ちだけならもらってやるぞ。」

な、何言ってんの?

体中が加速度を上げて脈を打ち始めた。

自分の気持ちがむせかえりそうになるほど内からせり上がってくる。

こんなに長い時間あいつの顔を見つめ返したことがあっただろうか。

泣きそうだった。

「・・・じゃ、もらって。」

「ん?」

あいつの頬がわずかに緊張した。

「私の気持ちもらって。」

「もちろんもらってやる。」

あいつの目が見たことないような優しい目で笑った。

私の全ての緊張がほぐれていく。

「やっと笑った。これからもっと俺に笑えよな。」

「時々ね。」

あいつは笑いながら私の頭にそっと手を置いた。

今年のチョコも無駄になっちゃったけど・・・。









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