God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
永田さんと2人だけになった途端、空気が変わる。
これは、山下さんと2人だけになった時と、少し似ている。
「おまえ、授業は?」
自習です。
と、言い掛けて、ウソは永田さんには通じない気がして、「フケます」
「そういう所が、キヨリとは違うな」
永田さんが笑ってくれた事を免罪符とみなし、永田さんに促されて、そのまま3年の教室にお邪魔……すぐ側の席に落ち着いた。
いつもなら緊張する場所だが、周りは課題やら、願書やら、受験の話題に夢中で、1匹くらい異種が入り込んだ事など気にも留めない様子である。
直球。
「色々、すみません」
もう色々ありすぎて。
右川だけじゃなく、俺自身の色々も。
永田さんは終始笑い混じりで、俺はその様子に救われていた。
さっきまでここにいたという右川は上機嫌で、「そんな事より、あたしの恋愛運をお願いしますっ」と、占い女子にお願いした後、〝大和撫子。陽のあたる……今はまだ、その坂道の途中〟と出た事を、「ヤマトナデシコ?うわぁ♪」と大喜びで帰ったらしい。
あれのどこが大和撫子なのか。日本中が泣いて怒るゾ。
「永田さんが付いてくれるって事なら、あいつも考え直すかもしれません」
「こっちはいいけど、本人がやる気無いんだし」
そうだよな。そこが1番の問題だ。
「沢村だって、俺がいくら言っても、もう出る気無いんだろ」
俺は、重森とのこれまでの事情、ここで初めて話して聞かせた。
思えば、松下さんより先に永田さんに報告するなんて今まで1度も無かった。
「1言、言ってくれてもよかったのに。松下でも」
俺は今、深い後悔の中に居る。
右川の事を、まず1番に永田さんに頼みに来るべきだった。
永田さんを味方に付ける事を、どうして俺は思い浮かばずにいたのか。
それはひとえに、自分の中の苦手意識に他ならない。感情が邪魔して、せっかくの機会をフイにした。
卒業も間近。
こんな土壇場になって、永田さんとの信頼関係が最高潮を迎えている。
……もったいない事、したな。
そこに、占い女子が再び、乱入。
「〝弁解も同情もいらない。欲しいのは……真心。ノーモア、下心〟」
「なんすか、それ」
「君の恋占い」
「頼んでませんけど」
下心って……人聞きの悪い。
「お金」と、占い女子は手を出した。
「は?なんすか、それ」 これこそ、邪悪な下心だ。
「押し売りじゃないですか」
「マジで可愛くない。つーか、ツマんない。ボーケーろーよぉ~」
ツマんないと突かれて、こっちはマジでムッときた。
「んじゃ、ついでに君のこれから、占ってあげよっか?」
「いえ、けっこーです」
当人は拒否したが、「俺が聞きたいな」と、永田さんに煽られて、女子はおっ始める。やがて、静かに顔を上げたかと思うと、「うーん……」と唸ったまま黙ってしまった。それがあんまり悩ましい様子に見えて、「何ですか?」さすがに俺も気になるぢゃないか。
〝何もするな〟
……は?
「だから、何もしなくていい、という結果だよ」
「まさか、これも仕込みですか?弟クンを有利にするために?」
永田さんは笑いながら、首を横に振る。
何もするなって。
拍子抜けした。1番考えもしない答えだ。
実際、重森に捕まっているから右川には関われない。だけど、だからといって本当に何もしなかったら、結果は火を見るより明らかだ。
この結果といい大和撫子といい、今回ばかりは占いの勘は期待できないかも。
3年1組を後にした。
5時間目は、すっかり始まっている。
途中で入って遅刻扱いも何だか無意味な気がして、おおよそが自習という3年クラスをちょろちょろと覗いていると、「おう!次期会長」と、先輩男子に陽気に背中を叩かれた。たまに言葉を交わす程度で普段それほど馴染みはない。
その先で、
「おう、次期会長!……の応援」
どこか冷めたエールを寄越したのは吹奏楽の3年だった。
エールというか、嫌味だな。
廊下に戯れ、ポケットに手を入れて、2~3人掛かりでシニカルな笑みを浮かべている。重森を操って何か企んでいると、充分疑えた。
従うフリでも警戒を怠るなと自分に言い聞かせる。これぐらいの事なら想定内だが、小野田率いるバスケ部武闘派の3人組はキツい。
もうノリを頼れないし……実の所、それが1番、俺の頭を悩ませていた。
これは、山下さんと2人だけになった時と、少し似ている。
「おまえ、授業は?」
自習です。
と、言い掛けて、ウソは永田さんには通じない気がして、「フケます」
「そういう所が、キヨリとは違うな」
永田さんが笑ってくれた事を免罪符とみなし、永田さんに促されて、そのまま3年の教室にお邪魔……すぐ側の席に落ち着いた。
いつもなら緊張する場所だが、周りは課題やら、願書やら、受験の話題に夢中で、1匹くらい異種が入り込んだ事など気にも留めない様子である。
直球。
「色々、すみません」
もう色々ありすぎて。
右川だけじゃなく、俺自身の色々も。
永田さんは終始笑い混じりで、俺はその様子に救われていた。
さっきまでここにいたという右川は上機嫌で、「そんな事より、あたしの恋愛運をお願いしますっ」と、占い女子にお願いした後、〝大和撫子。陽のあたる……今はまだ、その坂道の途中〟と出た事を、「ヤマトナデシコ?うわぁ♪」と大喜びで帰ったらしい。
あれのどこが大和撫子なのか。日本中が泣いて怒るゾ。
「永田さんが付いてくれるって事なら、あいつも考え直すかもしれません」
「こっちはいいけど、本人がやる気無いんだし」
そうだよな。そこが1番の問題だ。
「沢村だって、俺がいくら言っても、もう出る気無いんだろ」
俺は、重森とのこれまでの事情、ここで初めて話して聞かせた。
思えば、松下さんより先に永田さんに報告するなんて今まで1度も無かった。
「1言、言ってくれてもよかったのに。松下でも」
俺は今、深い後悔の中に居る。
右川の事を、まず1番に永田さんに頼みに来るべきだった。
永田さんを味方に付ける事を、どうして俺は思い浮かばずにいたのか。
それはひとえに、自分の中の苦手意識に他ならない。感情が邪魔して、せっかくの機会をフイにした。
卒業も間近。
こんな土壇場になって、永田さんとの信頼関係が最高潮を迎えている。
……もったいない事、したな。
そこに、占い女子が再び、乱入。
「〝弁解も同情もいらない。欲しいのは……真心。ノーモア、下心〟」
「なんすか、それ」
「君の恋占い」
「頼んでませんけど」
下心って……人聞きの悪い。
「お金」と、占い女子は手を出した。
「は?なんすか、それ」 これこそ、邪悪な下心だ。
「押し売りじゃないですか」
「マジで可愛くない。つーか、ツマんない。ボーケーろーよぉ~」
ツマんないと突かれて、こっちはマジでムッときた。
「んじゃ、ついでに君のこれから、占ってあげよっか?」
「いえ、けっこーです」
当人は拒否したが、「俺が聞きたいな」と、永田さんに煽られて、女子はおっ始める。やがて、静かに顔を上げたかと思うと、「うーん……」と唸ったまま黙ってしまった。それがあんまり悩ましい様子に見えて、「何ですか?」さすがに俺も気になるぢゃないか。
〝何もするな〟
……は?
「だから、何もしなくていい、という結果だよ」
「まさか、これも仕込みですか?弟クンを有利にするために?」
永田さんは笑いながら、首を横に振る。
何もするなって。
拍子抜けした。1番考えもしない答えだ。
実際、重森に捕まっているから右川には関われない。だけど、だからといって本当に何もしなかったら、結果は火を見るより明らかだ。
この結果といい大和撫子といい、今回ばかりは占いの勘は期待できないかも。
3年1組を後にした。
5時間目は、すっかり始まっている。
途中で入って遅刻扱いも何だか無意味な気がして、おおよそが自習という3年クラスをちょろちょろと覗いていると、「おう!次期会長」と、先輩男子に陽気に背中を叩かれた。たまに言葉を交わす程度で普段それほど馴染みはない。
その先で、
「おう、次期会長!……の応援」
どこか冷めたエールを寄越したのは吹奏楽の3年だった。
エールというか、嫌味だな。
廊下に戯れ、ポケットに手を入れて、2~3人掛かりでシニカルな笑みを浮かべている。重森を操って何か企んでいると、充分疑えた。
従うフリでも警戒を怠るなと自分に言い聞かせる。これぐらいの事なら想定内だが、小野田率いるバスケ部武闘派の3人組はキツい。
もうノリを頼れないし……実の所、それが1番、俺の頭を悩ませていた。