God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
2月8日~「来週の公開演説。右川さん、分かってるわよね」
「桂木って、すげぇな」
2月8日。早朝。
ビラの予備が無い!取ってくる!と、駆け出した桂木の背中に向けて、工藤がそう呟く。
今頃気付いたのか。さすが大物。時間軸が狂ってるとしか思えない。
側にいた女子バレー部、藤谷は髪の毛をクルクルと回しながら、
「そぉ?いい気になってない?部外者のクセに偉そうに仕切るなって感じ」
出た。
これだよ。
飛び出るヤツに女子は特に厳しいから。そして、こうゆう小さな妬みがやがて応援団の分裂につながると、確信している。……俺が、庇ってやらないと。
藤谷が、女子の群れを離れて独りになった所を見計らって、俺は近付いた。
「あの、桂木だけどさ」
藤谷は、ジッと見る。
「当人は、藤谷が1番頼れるって言ってるけど。もしキツい事やらされてるなら、俺からガツンと注意しようか」
藤谷は驚きと困惑の入り混じった表情を浮かべて、「そんなキツい事って訳でも……いいよ。そんなガツンとか。そこまでしなくても」と、言ったきり、さすがに秒殺とはいかないか。
しばらく黙りこんだ。
やがて、
「少しの間だし。責任無いっていうのも、意外と楽だし」
ちょうどそこに予備の用紙を携えて、桂木が戻ってきた。
「今日の昼休みは1年フロアを練り歩こうと思うんだけど。どうしよう」
「そんなら、なんかノリのいい音楽とか。あればいいんじゃん」
準備・段取りを確認し合う藤谷と桂木を眺めながら、俺って冴えてる!空に向かって親指を立てたくなった。
そんな冴えてる俺が、なんであのチビには歯がたたないんだろう。
あれ以降、姿を見ない。
今頃何やってんのか。
何をどうしたらいいのか分からなくて、立ち往生してるかもしれない。
それなら、いい気味だ。
1限始業のチャイムが鳴る5分前。
選管の阿木が、候補者に終了を告げに来た。仲間は1度、桂木の元に集まり、今日の予定を確認すると、それぞれの向かう先に散る。名前入りのたすきを外してポケットに押し込んでいると、そこに阿木がやってきた。
「右川さん、どこにも応援頼んでないみたい。どうするつもりかしらね」
「知るかよ」
俺は2度と関わらない。
そこに、チャイムの音と同時に、右川が駆け込んできた。
あれ以来、久しぶりである。
特に変わった所は無い。顔色も好い。エクボも健在。
いつもと違うと言えば、あの黄色ではなく、今日は地味な黒いマフラーを巻いていた。
右川は、口元までグルグル巻きのそのマフラーをクンクンと匂って、何だか気味の悪い笑みを浮かべている。仲間らしき女子に背中をド突かれて、弾かれたように、「らす♪」と、その100倍ド突いて返した。
こちらに向かってくる右川のその後ろ、松倉の姿を見つけた。
これだけは聞いておきたい。
「俺のパソコン、どうした」
「使ってますけどぉ~。ちゃんとぉ~、アタリマエにぃ~」
いつものように間延びした声でフザけた返事。簡単に戻って来るとは思っていない。だが、「絶対に売り飛ばすなよ」と釘は刺した。いつか奪い返す。
右川と目が合った。
2月8日。早朝。
ビラの予備が無い!取ってくる!と、駆け出した桂木の背中に向けて、工藤がそう呟く。
今頃気付いたのか。さすが大物。時間軸が狂ってるとしか思えない。
側にいた女子バレー部、藤谷は髪の毛をクルクルと回しながら、
「そぉ?いい気になってない?部外者のクセに偉そうに仕切るなって感じ」
出た。
これだよ。
飛び出るヤツに女子は特に厳しいから。そして、こうゆう小さな妬みがやがて応援団の分裂につながると、確信している。……俺が、庇ってやらないと。
藤谷が、女子の群れを離れて独りになった所を見計らって、俺は近付いた。
「あの、桂木だけどさ」
藤谷は、ジッと見る。
「当人は、藤谷が1番頼れるって言ってるけど。もしキツい事やらされてるなら、俺からガツンと注意しようか」
藤谷は驚きと困惑の入り混じった表情を浮かべて、「そんなキツい事って訳でも……いいよ。そんなガツンとか。そこまでしなくても」と、言ったきり、さすがに秒殺とはいかないか。
しばらく黙りこんだ。
やがて、
「少しの間だし。責任無いっていうのも、意外と楽だし」
ちょうどそこに予備の用紙を携えて、桂木が戻ってきた。
「今日の昼休みは1年フロアを練り歩こうと思うんだけど。どうしよう」
「そんなら、なんかノリのいい音楽とか。あればいいんじゃん」
準備・段取りを確認し合う藤谷と桂木を眺めながら、俺って冴えてる!空に向かって親指を立てたくなった。
そんな冴えてる俺が、なんであのチビには歯がたたないんだろう。
あれ以降、姿を見ない。
今頃何やってんのか。
何をどうしたらいいのか分からなくて、立ち往生してるかもしれない。
それなら、いい気味だ。
1限始業のチャイムが鳴る5分前。
選管の阿木が、候補者に終了を告げに来た。仲間は1度、桂木の元に集まり、今日の予定を確認すると、それぞれの向かう先に散る。名前入りのたすきを外してポケットに押し込んでいると、そこに阿木がやってきた。
「右川さん、どこにも応援頼んでないみたい。どうするつもりかしらね」
「知るかよ」
俺は2度と関わらない。
そこに、チャイムの音と同時に、右川が駆け込んできた。
あれ以来、久しぶりである。
特に変わった所は無い。顔色も好い。エクボも健在。
いつもと違うと言えば、あの黄色ではなく、今日は地味な黒いマフラーを巻いていた。
右川は、口元までグルグル巻きのそのマフラーをクンクンと匂って、何だか気味の悪い笑みを浮かべている。仲間らしき女子に背中をド突かれて、弾かれたように、「らす♪」と、その100倍ド突いて返した。
こちらに向かってくる右川のその後ろ、松倉の姿を見つけた。
これだけは聞いておきたい。
「俺のパソコン、どうした」
「使ってますけどぉ~。ちゃんとぉ~、アタリマエにぃ~」
いつものように間延びした声でフザけた返事。簡単に戻って来るとは思っていない。だが、「絶対に売り飛ばすなよ」と釘は刺した。いつか奪い返す。
右川と目が合った。