God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
〝2度と近寄るな〟
それは分かっている。だが、気にも留めない振りをするにも限界があった。
「おい」
「アギング、らす♪」
「あ、う、うん。お、おはよう」
俺だけ、すっかり無視してくれた。
いつかの〝近寄るな〟が、その目ヂカラから聞こえたような。
そこへやってきた桂木に向けて、「あ、ミノリ~らすぅ~♪」
ビラを無視して、アメだけを受け取った。
見ると、永田のビラは貰ったようで。「うわ。ウソっぽい。忘れちゃうよ。役立たず絶好調♪」
そこで紙を裏返して、「やた!これ裏が使えるじゃん。やるぅ~ブラザーK♪」
その先で黒川とハイタッチ、さらに2~3枚を貰って、校舎に消えた。
俺も永田も重森も、どの候補者本人にも挨拶無し。態度、悪い。
阿木はそれを見ても、注意もしない。
それどころか、
「来週の公開演説。右川さん、分かってるわよね」
「知るかよってっ」
何で敵対する候補者にいちいち親切に教えてやらなきゃ、なのか。
「そんなに心配なら、阿木が応援に立てばいいだろ」
選管にそれは許されない。それを知った上で、ここは敢えて言葉にして、これ以上俺を巻き込むなと、阿木を牽制した。
遠回しに嫌味と取られてもいい。
それほど、右川に対して、今の俺はヤサグレている。
そこに桂木がやってきて、何やら阿木にコソコソと耳打ちを始めた。
「何?」と聞いても、「うん。ちょっとね」と、俺には教えてはくれないようで……おまえら女子かっ。(女子だ。)
桂木に背中を押されて、俺は部室に向かった。
1時間目から体育、である。
今日は朝から……走るのか。
そう、俺は1日中、校舎を走り回る。立候補者に休憩できる休憩時間など、無い。1年に揉みくちゃにされ、2年にド突かれ、3年には無視され、全てを廻り終わって、教室に戻る。
基本、毎日が、このオールリピート。ヘビー・ローテーション。
例え主役の俺が不在であっても、応援団の営業活動というのは、もうそこら中で行われていて、
「今日はぁ、剣持と2人でぇ、3年クラスを回ってくるからねぇーん」
早々にお弁当を切り上げたと、藤谷は顔を上気させた。
「……あれ?剣持は手伝えない、んでは?」
「スイソーに文句言われたら、3年が挨拶に来いってうるさいんだぁーって言えばいいってさ」
「誰が」
「ミノリ様が」
とうとう〝様〟とまで付いたか。こういう言う時、思うのだ。剣持の領分を3年クラス限定とする辺りが、改めて桂木ミノリは上手い。それなら断られた重森側も文句は言えないだろう。
そして、いつの間にか応援団女子群をすっかり手中にしている。
もう白旗を上げざるを得ないクオリティの持ち主。
やはり、桂木ミノリは、上手いのだ。
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