God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
無事に演説を終え、壇上を降りる。
桂木と藤谷に向けて親指を突き出して手応えを伝えると、重森の横に並んだ。
「退屈。寝てた。聞いてなかった」
もちろん、何を言われても相手にしないと決めている。
「かったりーなッ」と、永田は緊張なのか待ちきれないのか、落ち着かない様子だ。
「バカでも緊張するのか」
重森のその一言に、「なにィ!」と、永田が発火。
いつも思うのだが、感度が良すぎる。
「こんな所でやめろよ」
重森の挑発以外の何ものでもない。ここで暴れたら命取り。
何で俺が敵を心配して、その暴走を止めてやるとまでしなければ、なのか。
永田さんの代わりに注意したと思えば……その永田さんだが、ゆっくりと背後から近寄ったと思うと、パコ!と弟の頭に一発喰らわせた。容赦ない1檄に、笑う輩は1人も居ない。
永田が凹んで収まったと思ったその矢先、
「2人とも、ポンコツ同士じゃん。仲良くしなよ」
今度は、右川が悪態をつく。
2人が綺麗に揃って、右川を睨みつけた。
「焦る気持ちも分かるけど。もう誰かに決まったようなもんだしね♪」
「どっかの裏切り者だよな」と、重森。
「どっかの卑怯者だよなッ」と、永田。
ほら来た。
お互い敵でありながら、俺に刃向う時だけは同調する。
本当に、厄介なヤツらだ。
いつの間にか、重森の演説が始まった。真冬の寒さを思い出す。同じ5分でも、温度がグッと冷えて感じるのは気のせいか。重森が演説を終えて降りてくる。それと入れ違いに、緊張で(?)ガッチガチの永田が上がって行った。
その背中に向かって右川が、
「永田く~ん。あたしが過半数取って、キミに委任状あげるからねーん」
永田は、ケッと悪態を付いて、
『うるせぇチビ!ちょい緊張してんだよッ。黙ってろ!』
マイクに向かって一声が弾けた。
『あ、や、ウッソ~。どもども』
これだけで笑いと拍手が起きるとは。確かに、ヤッてくれそうだ。
すぐ横で、「笑わせんな」と重森が吐き捨てる。
「委任状?何言ってんだ。永田の10分の1も取れないくせに」
俺も同じ事を考えた。
重森に代わりに言わせているような気分だった。
俺と重森は同類か。いや、俺と重森は違う。永田の10分の1取れたら、本気で凄い。怒りを飛び越えて、胴上げぐらいはしてやってもいい。
『なのでー、俺はぁ、この学校の……あ?何だこの英語は。ア、マ……ママ?』
そこで、ドカン!と笑いが起きた。黒川が、まるで元からそれを狙っていたかのように、ほくそ笑む。黒川監督、脚本、演出の永田劇場。
永田は隙だらけ。突っ込みどころが満載。こういう愛嬌が、無邪気が、俺には無い。1部の先輩が永田を可愛がる気持ちが分かる気がした。
次は右川の番だ。
右川は、永田と入れ違いにするすると出て行く。
周囲がザワつくと同時に、「小っせ~」と、クスクスと笑いが起こった。
どうせなら、いつかのチューリップで出て来いよ。
それなら秒殺で永田の愛嬌を凌ぐのに。
こないだのパレードが功を奏してか、バスケ部は忍び笑いに留まった。
だが吹奏楽からは、「潰せ」「ウゼぇ」「見えねー」と悪口雑言のメロディを轟々と浴びる。
『ほいほい』と、右川が呟いた。
いや、マイク入ってるし。そんな不慣れな様子を横目に見ながら、
「適当も大概にしろよ。普通にちゃんとやれ。みんな見てるんだからな」
一応、背後から釘は刺した。
右川は、咎めるような視線を投げる。
そこで、ゆっくりと黒いマフラーを外した。
憎むべき、敵同士。
あぁ、それなのに。
……右川は、何を言うのだろう。
何度も何度も思い知らされても、なお……この〝期待感〟。
色々ヤラれっ放しだと言うのに、ここにきてまでも、否が応にも、俺の胸内に盛り上がってくるのだ。
桂木と藤谷に向けて親指を突き出して手応えを伝えると、重森の横に並んだ。
「退屈。寝てた。聞いてなかった」
もちろん、何を言われても相手にしないと決めている。
「かったりーなッ」と、永田は緊張なのか待ちきれないのか、落ち着かない様子だ。
「バカでも緊張するのか」
重森のその一言に、「なにィ!」と、永田が発火。
いつも思うのだが、感度が良すぎる。
「こんな所でやめろよ」
重森の挑発以外の何ものでもない。ここで暴れたら命取り。
何で俺が敵を心配して、その暴走を止めてやるとまでしなければ、なのか。
永田さんの代わりに注意したと思えば……その永田さんだが、ゆっくりと背後から近寄ったと思うと、パコ!と弟の頭に一発喰らわせた。容赦ない1檄に、笑う輩は1人も居ない。
永田が凹んで収まったと思ったその矢先、
「2人とも、ポンコツ同士じゃん。仲良くしなよ」
今度は、右川が悪態をつく。
2人が綺麗に揃って、右川を睨みつけた。
「焦る気持ちも分かるけど。もう誰かに決まったようなもんだしね♪」
「どっかの裏切り者だよな」と、重森。
「どっかの卑怯者だよなッ」と、永田。
ほら来た。
お互い敵でありながら、俺に刃向う時だけは同調する。
本当に、厄介なヤツらだ。
いつの間にか、重森の演説が始まった。真冬の寒さを思い出す。同じ5分でも、温度がグッと冷えて感じるのは気のせいか。重森が演説を終えて降りてくる。それと入れ違いに、緊張で(?)ガッチガチの永田が上がって行った。
その背中に向かって右川が、
「永田く~ん。あたしが過半数取って、キミに委任状あげるからねーん」
永田は、ケッと悪態を付いて、
『うるせぇチビ!ちょい緊張してんだよッ。黙ってろ!』
マイクに向かって一声が弾けた。
『あ、や、ウッソ~。どもども』
これだけで笑いと拍手が起きるとは。確かに、ヤッてくれそうだ。
すぐ横で、「笑わせんな」と重森が吐き捨てる。
「委任状?何言ってんだ。永田の10分の1も取れないくせに」
俺も同じ事を考えた。
重森に代わりに言わせているような気分だった。
俺と重森は同類か。いや、俺と重森は違う。永田の10分の1取れたら、本気で凄い。怒りを飛び越えて、胴上げぐらいはしてやってもいい。
『なのでー、俺はぁ、この学校の……あ?何だこの英語は。ア、マ……ママ?』
そこで、ドカン!と笑いが起きた。黒川が、まるで元からそれを狙っていたかのように、ほくそ笑む。黒川監督、脚本、演出の永田劇場。
永田は隙だらけ。突っ込みどころが満載。こういう愛嬌が、無邪気が、俺には無い。1部の先輩が永田を可愛がる気持ちが分かる気がした。
次は右川の番だ。
右川は、永田と入れ違いにするすると出て行く。
周囲がザワつくと同時に、「小っせ~」と、クスクスと笑いが起こった。
どうせなら、いつかのチューリップで出て来いよ。
それなら秒殺で永田の愛嬌を凌ぐのに。
こないだのパレードが功を奏してか、バスケ部は忍び笑いに留まった。
だが吹奏楽からは、「潰せ」「ウゼぇ」「見えねー」と悪口雑言のメロディを轟々と浴びる。
『ほいほい』と、右川が呟いた。
いや、マイク入ってるし。そんな不慣れな様子を横目に見ながら、
「適当も大概にしろよ。普通にちゃんとやれ。みんな見てるんだからな」
一応、背後から釘は刺した。
右川は、咎めるような視線を投げる。
そこで、ゆっくりと黒いマフラーを外した。
憎むべき、敵同士。
あぁ、それなのに。
……右川は、何を言うのだろう。
何度も何度も思い知らされても、なお……この〝期待感〟。
色々ヤラれっ放しだと言うのに、ここにきてまでも、否が応にも、俺の胸内に盛り上がってくるのだ。