God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
右川は(短い)脚を開いて堂々と仁王立ち。
マイクを両手でしっかりと握り、1度大きく深呼吸。さすがに右川でも緊張するのか。ここでまさか歌う気か?と、俺はその様子を呑気に眺めていた。
『みんな、聞いてくださいっ!』
その声はキーンというハウリングに混ざって、聴衆の脳髄を直撃。
急に、何をテンパって。
『あたしは、選挙妨害を受けましたっ!』
その第一声に辺りはザワつく。
『ある人に呼び出されました。そして……その、誰も居ない部屋で……色々と……色々と……あたし、怖かった……』
右川が目を伏せた。その途端、周囲が泡立つように囁き始める。
俺は、微かに震えた。
『あたし怖くて……その時は、もう選挙なんて辞めようと思ったんです』
でも!
右川は壇上スレスレに立つ。
チビのくせに、それでも、いつもより大きく見えた。
『被害者のあたしが引き下がって、こんなヤツが会長なんて間違ってる!』
こんなヤツ……右川の指は重森を指した!ように見えた。
重森自身もそれを察したのだろう。すぐにその場を飛び退いて、結果、重森だか永田だか曖昧な空間に右川の指はある。
それより何より、右川の責めるようなその眼差しは指とは全く違う方向、真っ直ぐ俺に向かって、揺るぎなく突き刺さっていた。
こうして、俺が恐怖と不安で震えている間も。
『あたしは絶対許さない。だから、あたしは立候補しました。絶対、会長になります。もし会長になれなかったら、その時は……』
俺は強く眼を閉じた。
『こんな学校、辞める覚悟です!』
次の瞬間、まるで地響きのようなどよめきと、大きな歓声が上がった。

選挙戦、残り3日間。
双浜高は、会長選挙史上・最大のネガティブ・キャンペーンへと突入する。

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