God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
「受験勉強が手につかないよ」
「すみません」
「あたし、さっき沢村先輩が夢に出てきましたよ」
「ごめん」
(謝る事じゃない気もする。ていうか、授業中に寝るな)
聞いていると、どうもこれは緊急会議のようだ。
ずばり〝この事態を、どうするか〟。
「本当にそんな事があったなら、まずいよな」
「犯人探しとまではいかなくても、どうにか、けじめをつけないと。どうするかな、選管は」
生徒会の仕切りが入ると言う事か。
選管に、生徒会に、そしてケジメは、事と次第によってはおそらく学校にまで……学校を辞めるのは俺の方かもしれない。身に覚えがありすぎてどうにも震えた。
その時だった。
阿木が、静かに手を上げる。
「そこまで大ごとにする必要あります?これって、右川さんお得意のハッタリでは?」
阿木は、淡々とそう言った。
「だってあの様子だと、全然怖がってるように見えないので」
「そ、そうだよな」
俺は、すがるように阿木を見つめる。
唯一の味方、それも最高レベルの賢い味方を見つけた……。
「そういう作戦って事か。確かに、あの子、やりそうだもんな」
と、松下さんが笑う。
「でも本当かもしれないから、私でよければ、一応それとなく、本人に確かめておきますが」
阿木は永田さんに了解を貰うと、俺を3秒、ジッと見つめる。
この時……急に、嫌な感じが襲ってきた。
何かが、おかしい。
そう、言うなれば……あの場面の一部始終を見ていた阿木が、俺を1番疑っている筈だ。
あの出来事を、いつ永田会長にブチまけるかと、内心ヒヤヒヤしている。
あれが右川のハッタリだと、何故これほどはっきり決め付けてくれるのか。
あえて言うなら、そこが腑に落ちない。
俺が落選したら、阿木は3役になれない、それは困る、だから大ごとにしないための一時的処置と思えば思える。別の見方をすれば、それをネタに俺を脅して、これから何か要求するとか。
この場面、永田さんを目の前に、阿木にその辺を問い正す事は出来ないし。
その後、永田会長の鶴の一声で、ここは選管に通じる阿木に任せるとなった。
永田会長と松下さんは連れ立って生徒会室を出て行くと、阿木、浅枝、そして俺の3人だけが残される。
生徒会室は異様な空気に包まれた。少なくとも、俺はそう感じた。
あの事。
「誰にも、特に永田会長には……言わないでくれ。頼む」
俺は2人に頭を下げた。
「言えないわよ。あんな事」
「そうですよ。恥ずかしくて、言えないですよ」
……俺には、堂々と晒したじゃないか。
あの日の事を、2人は秘密にしてくれると、その約束は取り付けた。
事実を隠ぺい。そして証人に口止めという裏工作。
グレーどころか、俺は真っ黒だ。
正しい事で生徒会を一致させるんでは、なかったか。
あの占いの言う通り、本当に何もしなければ良かった……。

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