God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
「あ、そう言えば、今度のアタリマエくんポスター、イケてるね♪」
なるほど。
そこを、こじ開けたか。
何が、イケてるのか。
EXILE・TAKAHIROが俺の顔にスリ変わっているのはお約束、アートな雰囲気で1番気に入ってるポスターだったのに……今となっては落書きだらけ。おっぱいと下半身の放送禁止地獄絵巻だ。
「せっかく新しく貼りかえたばかりなのに。おまえのせいで」
「は?誰のせい?」
「トボけんな」
そこで、「ちょっと」「まーまー」と、阿木と桂木の両側から抑えられた。
そして、本題を促すように、阿木は、桂木に向けて頷いて見せる。
「それでは」と、桂木は直球、
「右川。あれって全部ウソでしょ?怒らないからさ、ちゃんと正直に話してくれないかな」
右川は、小首を傾げると、「ちゃんとちゃんとちゃんと?」
桂木は、右川のフザけに惑わされる事無く、「そう。ちゃんと白状して」
「じゃ、白状します」と、右川は一旦、姿勢を正して見せた。
だがすぐにフヤけて、
「本当だよ~ん♪」
カモメのように、バタバタと両手を振る。
「ウソじゃん。だって全然、楽しそうだもん。何それ?鳥の真似?」
「楽しいよ。楽しいに決まってんじゃん。これは復讐なんだから。あ、これは鳥じゃなくて、カナガワン♪」
知らない。何それ?知らないわね。
3人のシラけた反応を無視して、右川は両手を泳がせ続けた。
「もー、ズルいよ。こういうやり方」
まるで女子が彼氏にして見せるように、桂木は、甘い声でスネて見せる。
だが、全くお構いなしで、右川は泳ぎ続けた。やがて、「飽きた」と止める。
桂木は、責める事は無意味だと感じたのか、次は情に訴える路線に切り替えたようで。
「ね、右川。みんな大騒ぎ。選べなくて困ってる。ヤバいって思わない?」
「ね、ミノリ。そいつ、あんな事して平気で居るんだよ?それこそ、ヤバいって思わない?」
これは……ハイクオリティ・桂木 VS ハッタリ上等・右川、のバトルだ。
「そんな変態が選ばれたら、みんながマジ可哀想じゃね?」
「だったら、そいつが誰か教えて。そしたら、誰もそいつなんか選ばないから」
だよな。
そうなるよな。
「そ?だったらここで言っちゃお」
右川はスッと立ち上がった。
マジか!
顔面蒼白。
「アタリマエ!おまえだ!」
信じられない事に、右川は俺を真っ直ぐ、指さした。
こんな局面で、こうもあっさり曝け出すとは……俺は目を閉じた。
言い訳する資格なんか無い。自分が蒔いた種なんだから。
右川は無邪気に、ケケケ♪と笑って、
「実はさ、さっき吹奏楽のヤツらも、同じような事言いに来てさ」
ね?と、右川は阿木に投げ掛けた。
「そう。重森くん、3年と一緒に陳情に来たわよ。ほとんど怒鳴り込みっていうか」
桂木も、俺も驚いた。また、3年に泣き付いたのか。聞けば、重森も俺と同じように、「カネ森!噂の変態はおまえだぁ!」と指をさされて、
「ネットに暴露してやる!って脅したら、ちきしょーとかって半泣き。愉快愉快。ケケケ♪」 
……地獄。
桂木は、「おー。やるじゃん。右川」と、まるで武勇伝のようにそれを讃えると、「しょうがないなぁ。でもまぁ、それは許す」と、コロコロと笑う。
そこから右川と一緒になって、カナガワ?ん?をやりだした。
こう言う時、思うのだ。
骨の髄まで、バスケはバスケ。吹奏楽は吹奏楽。三つ子の魂100まで。
不意に、桂木だけがその動きを止めると、
「沢村は、そんな卑怯な事するタイプじゃない。ね?」
桂木は右川を諦めて、今度は阿木に同意を求めた。
だが阿木は、それに頷けない。
だよな。
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