God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
「分かんないよ、ミノリ。当選するため手段選ばないって事もあるじゃん?」
右川にも攻められて、阿木は、「そ、そうかしら」と曖昧に濁した。
「まだ言うかな。しつこいなー、もう」
桂木は、お手上げという様子で、
「違うでしょ?沢村じゃないよね?お願いだから、みんなの前でそれだけは言ってくれない?」
桂木は、俺の腕を突いた。
「沢村からも、お願いして」
俺は、お願い出来る立場じゃない。謝らなくてはならない立場だ。
すると、
「な~んかミノリと沢村、最近2人、益々あやしくね?」
今度は斜めから突っ込んできたか。
「もう、急に何を言い出すかな」と、桂木は瞬きを繰り返す。
右川は身を乗り出して、
「だって、こないだ教室で、チューしてたじゃん」
!?
「ウソ!嘘だよっ!そんな!そんな事、嘘でも周りに言わないで、もう!」
桂木は耳まで真っ赤になって、その場で地団太を踏んだ。
恥ずいとか怒るとかを通り越して、ただただ、俺は感心している。
おまえ、よく言えるな。その単語。
自分に降りかかった過去の1件を思えば、俺を目の前にその言葉だけは口に出したくない筈。
「ケケケ♪仲良いって事だよ。ね?アタリマエ♪」
これはまるで……女子同士がよくやる、恋の橋渡しか。
とすれば右川も、そして顔色1つ変えずに頷いている阿木も、知っているのか。桂木の本心。
近頃は何処を歩いても冷やかされる。だから薄々感づいていると言う事もあるかもしれない。あるいは、浮かれた話題で誤魔化して、桂木にこれ以上の追及をさせないつもり、かもしれない。
俺は誰の思惑にも乗らず、本音を悟られないよう、何か別の事を考える……振りをするしかなかった。実の所、俺自身、誰がどこまで知っていて、どこまで言ったらマズいとか、本音とか、内緒とか、忘れたふりをしたいとか……線引きが怪しくなってきたのだ。
余計な事を言わないように、もう黙る事で精一杯になる。
その間も、桂木は右川の説得を諦めなかった。
「ねー、右川。毎日アメあげるから」
「シルスマリアの生チョコがいい♪」
「そ、それは高価いな……あ、試験のヤマ、追試も見てあげるから」
「それは、ヨリコとノリくんと、のぞみちゃんに頼むから要らない」
「それは最初から、のぞみちゃん先生に行きなよ……あ、店の売上に協力する!右川亭に毎日通うから」
「カナガワン♪オンナは来るなぁ~」
「もう、いい加減にして」
「モウ、イイカゲンニシテ」
右川は、のらりくらりと攻撃をかわす。
「わかった。もう……何でもするから、とにかく取り消して下さいっ」
桂木は頭を下げた。
必死な桂木が哀れに思えて切ない。全部、俺のせいだ。余計な事をしなければ、俺は順当に会長になれただろう。桂木の功績を讃えて、3役にだって推してやれたかもしれない。今では、そう考え直して有り余るほど、桂木は真面目で、真剣で、いつも一生懸命だ。
ドス黒い俺なんかのために。
策は尽きたか。
生徒会室は不安定な沈黙に落ちた。
「ねぇ、ミノリ」と、おもむろに右川が口を開く。「取り返しのつかない事ってあるじゃん。どうすればいい?それって、謝って済むかな」
右川は桂木を説得に掛かった。
「あたし久々怒ってるんだよね。会長になる為なら何でもやるよ。本気だよ。学校に何の未練も無いし。落ちたらマジで辞めますから」
「それは、もう何を言ってもダメって事?」
「駄目。アタリマエに、駄目」
「その人が、心から謝罪しても?」
「つーか、そいつ、死ねばいいんだよ」
桂木は、次の言葉を無くしてしまった。
こじれると、これほど厄介だとは。
今この時点で、右川にとって俺は重森と一緒だ。物乞いにやってきて、アザ笑われ、追い出され、立ち去るしかない。
右川にも攻められて、阿木は、「そ、そうかしら」と曖昧に濁した。
「まだ言うかな。しつこいなー、もう」
桂木は、お手上げという様子で、
「違うでしょ?沢村じゃないよね?お願いだから、みんなの前でそれだけは言ってくれない?」
桂木は、俺の腕を突いた。
「沢村からも、お願いして」
俺は、お願い出来る立場じゃない。謝らなくてはならない立場だ。
すると、
「な~んかミノリと沢村、最近2人、益々あやしくね?」
今度は斜めから突っ込んできたか。
「もう、急に何を言い出すかな」と、桂木は瞬きを繰り返す。
右川は身を乗り出して、
「だって、こないだ教室で、チューしてたじゃん」
!?
「ウソ!嘘だよっ!そんな!そんな事、嘘でも周りに言わないで、もう!」
桂木は耳まで真っ赤になって、その場で地団太を踏んだ。
恥ずいとか怒るとかを通り越して、ただただ、俺は感心している。
おまえ、よく言えるな。その単語。
自分に降りかかった過去の1件を思えば、俺を目の前にその言葉だけは口に出したくない筈。
「ケケケ♪仲良いって事だよ。ね?アタリマエ♪」
これはまるで……女子同士がよくやる、恋の橋渡しか。
とすれば右川も、そして顔色1つ変えずに頷いている阿木も、知っているのか。桂木の本心。
近頃は何処を歩いても冷やかされる。だから薄々感づいていると言う事もあるかもしれない。あるいは、浮かれた話題で誤魔化して、桂木にこれ以上の追及をさせないつもり、かもしれない。
俺は誰の思惑にも乗らず、本音を悟られないよう、何か別の事を考える……振りをするしかなかった。実の所、俺自身、誰がどこまで知っていて、どこまで言ったらマズいとか、本音とか、内緒とか、忘れたふりをしたいとか……線引きが怪しくなってきたのだ。
余計な事を言わないように、もう黙る事で精一杯になる。
その間も、桂木は右川の説得を諦めなかった。
「ねー、右川。毎日アメあげるから」
「シルスマリアの生チョコがいい♪」
「そ、それは高価いな……あ、試験のヤマ、追試も見てあげるから」
「それは、ヨリコとノリくんと、のぞみちゃんに頼むから要らない」
「それは最初から、のぞみちゃん先生に行きなよ……あ、店の売上に協力する!右川亭に毎日通うから」
「カナガワン♪オンナは来るなぁ~」
「もう、いい加減にして」
「モウ、イイカゲンニシテ」
右川は、のらりくらりと攻撃をかわす。
「わかった。もう……何でもするから、とにかく取り消して下さいっ」
桂木は頭を下げた。
必死な桂木が哀れに思えて切ない。全部、俺のせいだ。余計な事をしなければ、俺は順当に会長になれただろう。桂木の功績を讃えて、3役にだって推してやれたかもしれない。今では、そう考え直して有り余るほど、桂木は真面目で、真剣で、いつも一生懸命だ。
ドス黒い俺なんかのために。
策は尽きたか。
生徒会室は不安定な沈黙に落ちた。
「ねぇ、ミノリ」と、おもむろに右川が口を開く。「取り返しのつかない事ってあるじゃん。どうすればいい?それって、謝って済むかな」
右川は桂木を説得に掛かった。
「あたし久々怒ってるんだよね。会長になる為なら何でもやるよ。本気だよ。学校に何の未練も無いし。落ちたらマジで辞めますから」
「それは、もう何を言ってもダメって事?」
「駄目。アタリマエに、駄目」
「その人が、心から謝罪しても?」
「つーか、そいつ、死ねばいいんだよ」
桂木は、次の言葉を無くしてしまった。
こじれると、これほど厄介だとは。
今この時点で、右川にとって俺は重森と一緒だ。物乞いにやってきて、アザ笑われ、追い出され、立ち去るしかない。