God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
今回の選挙報告書は、惨敗。惨敗。惨敗。そう報告したい気分である。
永田、重森、俺の3人は茫然とその結果を受け止めた。
圧勝過ぎる。3人なんか目じゃない。
重森と永田は見るも哀れ、当分、部員にも合わせる顔が無いだろう。
「馬鹿馬鹿しい。あんな非常識爆弾と、まともに戦えるか!」
「兄貴のせいだッ!みんな、兄貴のせいだからなッ」
負け惜しみと責任転嫁で大騒ぎの2人を横目に、俺は1人、この結果を噛みしめる。
有権者は〝面白れぇー〟と、その1語に尽きた。
1年の間では、「沢村先輩に100円!」と賭け金が回ったらしい。
それは、当確予想の賭け金なのか。それとも、俺が犯人だという賭け金なのか。……怖くて聞けない。
〝面白けりゃいい〟と、所詮、こうゆうやつらの集まりか。
経験とか実力とか熱意とか、どうでもいいのか。
永田さんの言う〝楽しめ〟とは次元が違うと思った。
俺は、その違いを信じて、有権者に、理性という信頼を預けていたのに。
「みんな、まだガキだね」と、吉森先生も、まさかのバカバカしい展開に呆れている。
そこでケーキの苺がスッ転んだと、浅枝と一緒になって先生は、「うぎゃ!」と、やけにギャルな声を上げた。(まだ若い部類でしょうか)
「右川っ子、ニコニコしてるじゃん。誰かに襲われたとか、そういう顔じゃないから、全く気にしてなかった」
普通の常識ある輩なら、そう判断して理性的に投票するだろう。
先生は、この結果に憤るほどの感慨は無いらしく、「若い子はしょうがないね」と諦め顔だ。(ここは、老練の部類か)
選挙妨害の噂は、投票と同時に下火になった。
命拾いしたと言えるかもしれない。
だが下火になったとはいえ、事実がハッキリした訳ではないと一部の団体からは、未だに俺はグレーの扱いを受けている。つまりは吹奏楽部とバスケ部だ。
こうなってくると、例え当選したとしても、あの2タッグに睨まれたままのグレーな会長では前途多難だったように思う。
残ったケーキをどうするかと女子3人(ここは3人共、ガキの部類)が争い始め、イチゴとチョコは阿木、ケーキ半分は浅枝、残りを先生が取ると言う結論に至る。
「あのー、すいません。一体誰の送別会ですか」
3年2人と一緒になって、俺も苦笑いした。
「荷物、残りは要らないから。適当に処分してよ」
「この汚いタオルは俺のじゃないよ。その前の先輩かな」
「この辞書はやる。本は売ってよし」
「あれ?このゲーム本懐かしい。僕のじゃないけど、ちょっと欲しいな」
2人は、浅枝に、1つ1つ、言い渡した。
そんな声を背中に聞きながら……阿木と目で合図して、花束を渡して、最後に2人のお言葉を聞いて……穏やかで静謐な送別会がお開きとなる。
阿木と浅枝の後片付けを手伝いながら、
「正直、実感ないです。あたしが生徒会入った頃から、お2人は殆ど出て来られなくて。先輩が居なくても、今日も進路相談かなーって、自然に考えちゃいそうですよ」
浅枝のそれには頷ける。実務は2年が中心で請け負い、3年は蚊帳の外だから。
俺だって、2人との思い出と言って頭に浮かぶのは、バタバタと暴れた予算委員会やら文化祭やら、どれも去年、俺と阿木が1年生の頃の記憶である。
2人と密に関わった時期だった。
永田さんを煙たいと遠ざけ、松下さんには頼りっぱなしの。
「私は、永田くんとは毎日のように会ってるから」
惚気じゃなくて……と阿木は、「卒業の実感、無いわね。この後も会うし」
惚気じゃないわよ……と、さすがに恥ずかしくなってか、「ゴミ捨ててくる」と消えた。
俺にとって、その実感は、小さく苦い薬を飲み込むみたいに、毎日毎日、1粒ずつ降りてくるだろう。
もう頼れない。
泣きつく事も出来ない。
そうか。俺は落選したのだ。泣きつくという状況には、もう無くて。
生徒会は、休むヒマもなく、次の準備に取り掛かった。
予選会。
ステージ発表を行うこの行事は、殆どが文化祭の演し物の繰り返し。
だから、それほど厄介な準備は無い。
卒業生が、懐かしさと寂しさのカフェオレ状態で、思い出と共に懐かしむ。
そんな、最後の大舞台。
よく考えたら俺にとっても、これが生徒会で最後の仕事になる。
そう思うと、いつもより丁寧に予定表を作成する気分になって……自分が卒業する訳でもないのに思い出が切なく、懐かしく甦ってきた。
思えば、俺も卒業か。
生徒会3役。
どうせ俺は頭数には入っていない。例え入っていたとしても、こんなグレーな執行部、誰も信用しない。任命するだけムダだ。とうとう、俺はお役御免。
あんなに嫌だった学校政治が、こうなると妙に名残惜しく思えてくるから不思議だ。
そんな時である。
珍しい事が起きた。
永田、重森、俺の3人は茫然とその結果を受け止めた。
圧勝過ぎる。3人なんか目じゃない。
重森と永田は見るも哀れ、当分、部員にも合わせる顔が無いだろう。
「馬鹿馬鹿しい。あんな非常識爆弾と、まともに戦えるか!」
「兄貴のせいだッ!みんな、兄貴のせいだからなッ」
負け惜しみと責任転嫁で大騒ぎの2人を横目に、俺は1人、この結果を噛みしめる。
有権者は〝面白れぇー〟と、その1語に尽きた。
1年の間では、「沢村先輩に100円!」と賭け金が回ったらしい。
それは、当確予想の賭け金なのか。それとも、俺が犯人だという賭け金なのか。……怖くて聞けない。
〝面白けりゃいい〟と、所詮、こうゆうやつらの集まりか。
経験とか実力とか熱意とか、どうでもいいのか。
永田さんの言う〝楽しめ〟とは次元が違うと思った。
俺は、その違いを信じて、有権者に、理性という信頼を預けていたのに。
「みんな、まだガキだね」と、吉森先生も、まさかのバカバカしい展開に呆れている。
そこでケーキの苺がスッ転んだと、浅枝と一緒になって先生は、「うぎゃ!」と、やけにギャルな声を上げた。(まだ若い部類でしょうか)
「右川っ子、ニコニコしてるじゃん。誰かに襲われたとか、そういう顔じゃないから、全く気にしてなかった」
普通の常識ある輩なら、そう判断して理性的に投票するだろう。
先生は、この結果に憤るほどの感慨は無いらしく、「若い子はしょうがないね」と諦め顔だ。(ここは、老練の部類か)
選挙妨害の噂は、投票と同時に下火になった。
命拾いしたと言えるかもしれない。
だが下火になったとはいえ、事実がハッキリした訳ではないと一部の団体からは、未だに俺はグレーの扱いを受けている。つまりは吹奏楽部とバスケ部だ。
こうなってくると、例え当選したとしても、あの2タッグに睨まれたままのグレーな会長では前途多難だったように思う。
残ったケーキをどうするかと女子3人(ここは3人共、ガキの部類)が争い始め、イチゴとチョコは阿木、ケーキ半分は浅枝、残りを先生が取ると言う結論に至る。
「あのー、すいません。一体誰の送別会ですか」
3年2人と一緒になって、俺も苦笑いした。
「荷物、残りは要らないから。適当に処分してよ」
「この汚いタオルは俺のじゃないよ。その前の先輩かな」
「この辞書はやる。本は売ってよし」
「あれ?このゲーム本懐かしい。僕のじゃないけど、ちょっと欲しいな」
2人は、浅枝に、1つ1つ、言い渡した。
そんな声を背中に聞きながら……阿木と目で合図して、花束を渡して、最後に2人のお言葉を聞いて……穏やかで静謐な送別会がお開きとなる。
阿木と浅枝の後片付けを手伝いながら、
「正直、実感ないです。あたしが生徒会入った頃から、お2人は殆ど出て来られなくて。先輩が居なくても、今日も進路相談かなーって、自然に考えちゃいそうですよ」
浅枝のそれには頷ける。実務は2年が中心で請け負い、3年は蚊帳の外だから。
俺だって、2人との思い出と言って頭に浮かぶのは、バタバタと暴れた予算委員会やら文化祭やら、どれも去年、俺と阿木が1年生の頃の記憶である。
2人と密に関わった時期だった。
永田さんを煙たいと遠ざけ、松下さんには頼りっぱなしの。
「私は、永田くんとは毎日のように会ってるから」
惚気じゃなくて……と阿木は、「卒業の実感、無いわね。この後も会うし」
惚気じゃないわよ……と、さすがに恥ずかしくなってか、「ゴミ捨ててくる」と消えた。
俺にとって、その実感は、小さく苦い薬を飲み込むみたいに、毎日毎日、1粒ずつ降りてくるだろう。
もう頼れない。
泣きつく事も出来ない。
そうか。俺は落選したのだ。泣きつくという状況には、もう無くて。
生徒会は、休むヒマもなく、次の準備に取り掛かった。
予選会。
ステージ発表を行うこの行事は、殆どが文化祭の演し物の繰り返し。
だから、それほど厄介な準備は無い。
卒業生が、懐かしさと寂しさのカフェオレ状態で、思い出と共に懐かしむ。
そんな、最後の大舞台。
よく考えたら俺にとっても、これが生徒会で最後の仕事になる。
そう思うと、いつもより丁寧に予定表を作成する気分になって……自分が卒業する訳でもないのに思い出が切なく、懐かしく甦ってきた。
思えば、俺も卒業か。
生徒会3役。
どうせ俺は頭数には入っていない。例え入っていたとしても、こんなグレーな執行部、誰も信用しない。任命するだけムダだ。とうとう、俺はお役御免。
あんなに嫌だった学校政治が、こうなると妙に名残惜しく思えてくるから不思議だ。
そんな時である。
珍しい事が起きた。