God bless you!~第7話「そのプリンと、チョコレート」・・・会長選挙
話の、その先を促すと。
「右川にね、選挙の事とか、沢村の事とか、あたしの事とか、色々相談してたんだけど」
「右川?」
「そう。生徒会の3役にしてくれるって言うから」
「右川に、また頼んだって事?3役に入りたいって?」
桂木は頷いた。
そう言う事も有るとは思った。それを責める気持ちは無い。それがどうして俺との事に。
桂木の目が、一段と、落ち着きなく揺れる。
「右川を説得に行ったでしょ。あたしあの後もう1回、右川に直談判して」
もう1日も無い。
このままじゃ沢村が会長になれない。
ううん、その前に、ちゃんと戦えないから。
だからせめて、あれは沢村じゃないって言って欲しい。
もう、嘘でもいいから。
「そしたら」
〝もうしばらく静かにしてくれる?あたしが会長になったら生徒会で沢村と一緒にしてあげるから〟
「はぁ?って思ったけど、本当に右川が圧倒的多数で当選しちゃうから」
〝あれは全部うっそ♪みんなにも、そのうち伝わると思うから、もうちょっと我慢してね~ん〟
「これも、はぁ?って思ったけど、右川の言通り本当にそんな噂が流れて」
〝これで沢村も安心。こうなったら付き合えば?ついでに乗っけようか〟
「クラスに戻ったら、2人の事がもう凄い噂になってて。こんなの絶対、沢村が怒ると思った。それを右川に言ったら」
〝文句言わせないよ。あいつだって、あたしとデキてるって、みんなに平気でウソ垂れ流したじゃん〟
「そう言えば、そんな事もあった、かな。朝から仲間に色々と訊かれて、あたしも、つい」
眩暈がする。
桂木は一体何を頼んで。
どこからが右川の暴走で、いやもうこれは……桂木の暴走。
俺は頭を抱えた。
「ごめん。ちょっと、整理したいから」
「本当ごめん!どうしても生徒会やりたかったから。沢村と一緒に」
てめーッ!と、そこに永田が乱入。
このクソ忙しい時に。
「沢村!何コソコソ、やらしー事してんだよッ!おい!ここに居るぞッ!」
その声を合図に、バスケ部とバレー部、男子も女子もドヤドヤと雪崩れ込んできて、「うおお~!」「アゲアゲ!」「逝け逝け」と陰鬱な裏門が、アッという間にお祭り状態になった。
「チューだ!味見しろッ!」
と、永田が桂木の腕を引っ張るが早いか、同時に、後ろの誰かがドン!と俺を突き飛ばして、危うく、俺が永田を味見する所だった。
「どけどけ!」
いつものようにポカポカと叩かれ、チョップも飛び蹴りも、俺は甘んじて喰らう。そこにランニングから戻ってきた陸上部と水泳部を巻き込んで、裏門史上・最大の大賑わいとなった。
誰かが踊り出し、歌い出す。こうなってくると、もはや俺と桂木がどうとか、気にする輩は居なくなる。1人を除いて……。
桐生を始めとするサッカー部が、何事かと様子を見に来た。
桐生と目が合った。今の俺は、言葉を持たない。喧噪をそのままに、俺は永田軍団をスリ抜けて、静かに部活に戻った。
噂は光の速さで駆け巡る。俺と桂木の色々も。右川のウソも。
恐らく、言いふらした噂の出所は……阿木だ。
間違いない。ヤツも右川に肩入れしたに違いない。
今思えばあの時、永田さんに向けて、あれは右川のハッタリだと晒した阿木は、俺を庇った訳でも何でもなかった。あの時、話がこれ以上大きくなる事を恐れた。そして、しれっと右川の思惑に便乗。俺ら候補者が非難轟々の期間中ではなく、全てが終わった後、そのタイミングを狙って事実を晒した。
おかしいとは思った。
だが、自分の事情に頭が一杯で、それどころじゃなくて。
納得できない。
こんなやり方。
右川との取引に応じた……桂木の顔を、今までのように、普通に見返す事ができない。最後に重いコートを脱いだのは、桂木だったという事だ。
怒り。困惑。どうブツけた所で、気が晴れない。
石原が俺の機嫌を取りながら、どこかビクビクと打ち上げてくるボールを、誰も居ない相手コートに向けて、俺は全力で打ち込んだ。
ノリは……もう2度と戻って来ないんじゃないか。
そんな危機感をヒシヒシと感じる。
裏門に集ったまま、黒川も、工藤も、未だ誰も帰って来ない。
イライラしてくる。
「練習放り出して、あいつら何やってんだ!」
みんな、右川のハッタリに踊らされて!
俺は、もう絶対に何もしないぞ。
プロセスはどうあれ、右川は生徒会長になる。辞退なんかさせない。
委任状?ふざけんな。
もともと、右川を会長に推薦したのは、俺だ。それを俺自身がじっくり後悔すると共に、どうしてあそこで沢村を選ばなかったのかと、周りを巻き込んで、そこにも後悔をたっぷり盛り込んでやる。
俺は執行部に入る。右川が、桂木とそう約束した。だから、それが守られる事は確実だろう。
例え会長でなくとも、俺が執行部に在籍している限り、生徒会活動は円滑に進む。結果として、当初の俺の希望通りだ。
勝負は、これから。
……見てろよ。
「右川にね、選挙の事とか、沢村の事とか、あたしの事とか、色々相談してたんだけど」
「右川?」
「そう。生徒会の3役にしてくれるって言うから」
「右川に、また頼んだって事?3役に入りたいって?」
桂木は頷いた。
そう言う事も有るとは思った。それを責める気持ちは無い。それがどうして俺との事に。
桂木の目が、一段と、落ち着きなく揺れる。
「右川を説得に行ったでしょ。あたしあの後もう1回、右川に直談判して」
もう1日も無い。
このままじゃ沢村が会長になれない。
ううん、その前に、ちゃんと戦えないから。
だからせめて、あれは沢村じゃないって言って欲しい。
もう、嘘でもいいから。
「そしたら」
〝もうしばらく静かにしてくれる?あたしが会長になったら生徒会で沢村と一緒にしてあげるから〟
「はぁ?って思ったけど、本当に右川が圧倒的多数で当選しちゃうから」
〝あれは全部うっそ♪みんなにも、そのうち伝わると思うから、もうちょっと我慢してね~ん〟
「これも、はぁ?って思ったけど、右川の言通り本当にそんな噂が流れて」
〝これで沢村も安心。こうなったら付き合えば?ついでに乗っけようか〟
「クラスに戻ったら、2人の事がもう凄い噂になってて。こんなの絶対、沢村が怒ると思った。それを右川に言ったら」
〝文句言わせないよ。あいつだって、あたしとデキてるって、みんなに平気でウソ垂れ流したじゃん〟
「そう言えば、そんな事もあった、かな。朝から仲間に色々と訊かれて、あたしも、つい」
眩暈がする。
桂木は一体何を頼んで。
どこからが右川の暴走で、いやもうこれは……桂木の暴走。
俺は頭を抱えた。
「ごめん。ちょっと、整理したいから」
「本当ごめん!どうしても生徒会やりたかったから。沢村と一緒に」
てめーッ!と、そこに永田が乱入。
このクソ忙しい時に。
「沢村!何コソコソ、やらしー事してんだよッ!おい!ここに居るぞッ!」
その声を合図に、バスケ部とバレー部、男子も女子もドヤドヤと雪崩れ込んできて、「うおお~!」「アゲアゲ!」「逝け逝け」と陰鬱な裏門が、アッという間にお祭り状態になった。
「チューだ!味見しろッ!」
と、永田が桂木の腕を引っ張るが早いか、同時に、後ろの誰かがドン!と俺を突き飛ばして、危うく、俺が永田を味見する所だった。
「どけどけ!」
いつものようにポカポカと叩かれ、チョップも飛び蹴りも、俺は甘んじて喰らう。そこにランニングから戻ってきた陸上部と水泳部を巻き込んで、裏門史上・最大の大賑わいとなった。
誰かが踊り出し、歌い出す。こうなってくると、もはや俺と桂木がどうとか、気にする輩は居なくなる。1人を除いて……。
桐生を始めとするサッカー部が、何事かと様子を見に来た。
桐生と目が合った。今の俺は、言葉を持たない。喧噪をそのままに、俺は永田軍団をスリ抜けて、静かに部活に戻った。
噂は光の速さで駆け巡る。俺と桂木の色々も。右川のウソも。
恐らく、言いふらした噂の出所は……阿木だ。
間違いない。ヤツも右川に肩入れしたに違いない。
今思えばあの時、永田さんに向けて、あれは右川のハッタリだと晒した阿木は、俺を庇った訳でも何でもなかった。あの時、話がこれ以上大きくなる事を恐れた。そして、しれっと右川の思惑に便乗。俺ら候補者が非難轟々の期間中ではなく、全てが終わった後、そのタイミングを狙って事実を晒した。
おかしいとは思った。
だが、自分の事情に頭が一杯で、それどころじゃなくて。
納得できない。
こんなやり方。
右川との取引に応じた……桂木の顔を、今までのように、普通に見返す事ができない。最後に重いコートを脱いだのは、桂木だったという事だ。
怒り。困惑。どうブツけた所で、気が晴れない。
石原が俺の機嫌を取りながら、どこかビクビクと打ち上げてくるボールを、誰も居ない相手コートに向けて、俺は全力で打ち込んだ。
ノリは……もう2度と戻って来ないんじゃないか。
そんな危機感をヒシヒシと感じる。
裏門に集ったまま、黒川も、工藤も、未だ誰も帰って来ない。
イライラしてくる。
「練習放り出して、あいつら何やってんだ!」
みんな、右川のハッタリに踊らされて!
俺は、もう絶対に何もしないぞ。
プロセスはどうあれ、右川は生徒会長になる。辞退なんかさせない。
委任状?ふざけんな。
もともと、右川を会長に推薦したのは、俺だ。それを俺自身がじっくり後悔すると共に、どうしてあそこで沢村を選ばなかったのかと、周りを巻き込んで、そこにも後悔をたっぷり盛り込んでやる。
俺は執行部に入る。右川が、桂木とそう約束した。だから、それが守られる事は確実だろう。
例え会長でなくとも、俺が執行部に在籍している限り、生徒会活動は円滑に進む。結果として、当初の俺の希望通りだ。
勝負は、これから。
……見てろよ。