野獣の食事
騒々しい一時は消え、男は二人に

「疑って悪かったなー。すまんかった。」

深々と頭を下げ、バーを出ていく。

男が、バーから出ていくのを見送ると、晃は大笑いしながら、今渡された
名刺を破り捨てた。

「ハッハッハッーだ!バカだぜあいつ!オレが伊藤晃だっつーの!見たか?弘?あいつの顔?バカ丸出しだぜ!」

心から、先程の男に対して同情する。

晃は得意そうに、

「カンペーイ!」

と、また飲み始める。

弘は呆れ顔で、晃を見つめる。

まー、しかしこんな事は晃といる限りはいつもの事だから、そこまでは気にしてない。

むしろ、普通では体験できない様なことを、体験できるのだから、楽しさすら感じてた。

「…しかし、バレたら酷いことになんないか」

弘は、頭の中を過ぎった思いを、ふと口にした。
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