リライトリライト
「黒谷先輩。なんだか嬉しそうですね。」

「そう?ジムがさ。
 いいところだったから入会しようと思って。」

「………それだけですか?
 いい出会いがあったんじゃないですか!?」

「そ、そんなことないよ。
 インストラクターの人は親しげで割とかっこ良かったかな。」

 割とね。割と。
 隆弘の方が断然かっこいいんだけどね。

「私も出会いを求めて何か始めようかなぁ。
 運動は苦手だからなぁ。
 出会いがありそうな習い事…。」

「なんだ~?社内ナンバーワンで可愛いって言われる吉原が弱気じゃないか。
 ま、俺の心は黒谷ただ1人だけどな。」

「はいはい。言っててください。」

 いつもの戯れ合いも今日は仏の心で聞けそう…だけど、やっぱりいつも通り邪険に扱う。

「なんだ…。今日の黒谷、女っぷりを上げたんじゃないのか?」

「はいはい。」

 佐野主任は放っておいて、仕事に戻ろうと先を歩く。
 だから未紗のつぶやきは聞こえなかった。

「黒谷先輩。
 新しい恋でも見つけたんじゃないかな。」

「は……。そうなのか。」

「黒谷先輩、美人なのに鈍感だから茶化してても伝わりませんよ?」

 冷たく言い放つ未紗に佐野主任は「そんなんじゃないさ」と力なくつぶやいた。





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