リライトリライト
そういえば冗談がどこから本当になったのかは聞いていない。
ちょうど佐野主任はそのことを自ら話し始めた。
「美人なのに悲しそうな顔で「元彼が忘れられない」って言われればイチコロだぞ。
魔性だよなぁ。黒谷は。」
体に回していた腕で背中をトントンと優しくたたきながら佐野主任は話し続けた。
続きはいつものおちゃらけた声じゃなくて低くて穏やかな優しい声だった。
「俺は…。お前を笑わせたかったんだ。
悲しそうに目を伏せて笑う黒谷の顔が頭から離れなくて。
幸せそうな顔で笑わせたかった。」
くっつけていた顔を離して佐野主任を見ると目が合った。
苦笑して優しく頬を撫でる手は優しい。
「ま、泣かせないとか言っておいてずいぶん泣かせてるよな。」
「そうですよ。
俺を想って泣いたのかって喜んだりして。」
文句を言っても優しい眼差しは変わらない。
その眼差しに真剣な色合いが浮かんだ。
「それでも…聞いて欲しい。
俺はこれからも黒谷と星を眺めたいし、黒谷と……。」
体を起こした佐野主任が私を見下ろした。
私はそんな佐野主任を見上げるしかなくて、佐野主任の後ろには満天の星が見えた。
「好きだ。黒谷。」
星が降ってくるみたいに佐野主任はゆっくりと顔を近づけて、そっと唇を重ね合わせた。
佐野主任との関係が変わってから初めてのキスだった。
今までのキスとは違う気がして胸が締め付けられる。
「星の思い出は俺とのだけに上書きして欲しかったが…無理にとは言わない。」
離れていく体に腕を回して、ぎゅっとしがみついた。
「囚われていた過去から解放してくれたのは佐野主任です。だから…。」
隆弘のところへ行かせてくれて、その上、一度は隆弘を選んだ私を『待ってるって言っただろ?』と受け入れてくれた。
隆弘と付き合ってみないと自分の気持ちに気づけないほどの大馬鹿者で……それなのに……。
「だからなんだ。」
佐野主任はしがみついていた私を座らせて隣り合った。
緊張から顔が見れなくて佐野主任の胸に頭をうずめる。
「俺は…好きだぞ。黒谷のことが。
黒谷はどうなんだ。」
不確かには気持ちは伝わり合っているとは思う。
だからあやふやなものじゃなく、ちゃんと言葉で言いたいし言われたいんだというのが伝わってくる。
その思いに応える為に口を開いた。
「好き……です。よ。佐野主任のこと。」
「あぁ。そうか。本当だな?…良かった。」
心底安堵している声と柔らかな抱擁。
その声が似合わなくて、つい憎まれ口をたたく。
「余裕そうなのに…。」
「年下の女の子に30過ぎのオッサンがあたふたしてたら格好つかないだろ?」
「本当はあたふたしてたんですか?」
「………。」
「してないんじゃないですか!」
「馬鹿。そんなわけないだろ。」
嘘か本当かは分からない。
だけど佐野主任の思惑通りに半分はなったかな。
星空の元で初めて「好き」なんて言われたら、星を見る度に思い出さざるを得ない。
「黒谷は……笑ってろよ。」
茶化したような、それでいて温かい言葉。
それに答えるように少しだけ素直な気持ちを告げる。
「…………佐野主任が側にいてくれるなら。」
ハッと息を吐いた佐野主任は思ってもみなかった答えだったみたいだ。
「……くそっ。可愛い奴。」
柔らかな抱擁に力が込められて、それからもう一度優しいキスをした。
ちょうど佐野主任はそのことを自ら話し始めた。
「美人なのに悲しそうな顔で「元彼が忘れられない」って言われればイチコロだぞ。
魔性だよなぁ。黒谷は。」
体に回していた腕で背中をトントンと優しくたたきながら佐野主任は話し続けた。
続きはいつものおちゃらけた声じゃなくて低くて穏やかな優しい声だった。
「俺は…。お前を笑わせたかったんだ。
悲しそうに目を伏せて笑う黒谷の顔が頭から離れなくて。
幸せそうな顔で笑わせたかった。」
くっつけていた顔を離して佐野主任を見ると目が合った。
苦笑して優しく頬を撫でる手は優しい。
「ま、泣かせないとか言っておいてずいぶん泣かせてるよな。」
「そうですよ。
俺を想って泣いたのかって喜んだりして。」
文句を言っても優しい眼差しは変わらない。
その眼差しに真剣な色合いが浮かんだ。
「それでも…聞いて欲しい。
俺はこれからも黒谷と星を眺めたいし、黒谷と……。」
体を起こした佐野主任が私を見下ろした。
私はそんな佐野主任を見上げるしかなくて、佐野主任の後ろには満天の星が見えた。
「好きだ。黒谷。」
星が降ってくるみたいに佐野主任はゆっくりと顔を近づけて、そっと唇を重ね合わせた。
佐野主任との関係が変わってから初めてのキスだった。
今までのキスとは違う気がして胸が締め付けられる。
「星の思い出は俺とのだけに上書きして欲しかったが…無理にとは言わない。」
離れていく体に腕を回して、ぎゅっとしがみついた。
「囚われていた過去から解放してくれたのは佐野主任です。だから…。」
隆弘のところへ行かせてくれて、その上、一度は隆弘を選んだ私を『待ってるって言っただろ?』と受け入れてくれた。
隆弘と付き合ってみないと自分の気持ちに気づけないほどの大馬鹿者で……それなのに……。
「だからなんだ。」
佐野主任はしがみついていた私を座らせて隣り合った。
緊張から顔が見れなくて佐野主任の胸に頭をうずめる。
「俺は…好きだぞ。黒谷のことが。
黒谷はどうなんだ。」
不確かには気持ちは伝わり合っているとは思う。
だからあやふやなものじゃなく、ちゃんと言葉で言いたいし言われたいんだというのが伝わってくる。
その思いに応える為に口を開いた。
「好き……です。よ。佐野主任のこと。」
「あぁ。そうか。本当だな?…良かった。」
心底安堵している声と柔らかな抱擁。
その声が似合わなくて、つい憎まれ口をたたく。
「余裕そうなのに…。」
「年下の女の子に30過ぎのオッサンがあたふたしてたら格好つかないだろ?」
「本当はあたふたしてたんですか?」
「………。」
「してないんじゃないですか!」
「馬鹿。そんなわけないだろ。」
嘘か本当かは分からない。
だけど佐野主任の思惑通りに半分はなったかな。
星空の元で初めて「好き」なんて言われたら、星を見る度に思い出さざるを得ない。
「黒谷は……笑ってろよ。」
茶化したような、それでいて温かい言葉。
それに答えるように少しだけ素直な気持ちを告げる。
「…………佐野主任が側にいてくれるなら。」
ハッと息を吐いた佐野主任は思ってもみなかった答えだったみたいだ。
「……くそっ。可愛い奴。」
柔らかな抱擁に力が込められて、それからもう一度優しいキスをした。