【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
「なぁ、水美?」
コトコト、音を奏でる土鍋の前で、俺は彼女の名前を呼ぶ。
すると、バッサリ切り捨てられた。
「キスはだめです」
そこに少々傷付きもするけれど…。
「そーじゃなくて」
「じゃ、なんですか?」
「敬語、そろそろ止めてみない?」
1つの賭け。
出来れば良いと即返して欲しい。
けれど、それはすぐに叶わなくなる。
「…やめて…み、ません」
「なんで?やっぱり、こんなオッサンじゃ…いや?」
「そう、じゃなくて…」
口ごもる彼女への距離を、壁際に押しやる事で詰めていく。
「じゃあ、なんで?」
「だって…そんなの今更………」
「なに?聞こえない」
分かっているのに、意地悪く、彼女から言葉を吐き出させようとする、俺。
そんな俺に恨めしそうな顔をするけれど、やっぱり今回も彼女の根負け。
「恥ずかしい、んだもん…」
シュー…
瞬間湯沸し器みたいに、沸騰してしまう、彼女の頬。
あー。
なんで俺からは手を出さないなんて宣言したんだろ。
「みーなみ」
「むり、です!」
「はぁ…」
でも、わざと溜息を吐いて、落胆して見せると…。
「だって、瑛飛さんって呼んでるじゃないですか…」
と、滅茶苦茶恥じらいを含んだ返事が返ってきた。