【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
なんというか。
部屋に、好きな女がいるって事が、こんなにも良いもんだなんてな。
今までの俺なら全く有り得ない事だ。
パーソナルスペースに、入り込んで来ようとして来た存在は幾らでもいたけれど…不快感しかなく、軽く受け流してきた。
「じゃあ、名前だけでもいいよ。出来るだけ呼んで?お前の声、聞きたい」
「そんなの、何時も聞いてるじゃないですか」
「何時も、聞いてたいの!」
「もう、我儘」
「お前にだけだよ」
甘い甘い…出来るだけ、彼女に抵抗されないような、彼女の耳に残るような声で…。
「瑛飛さん」
「んー?」
「瑛飛さん…」
「なぁに?」
「顔、近い…です」
「だって…キス、したい」
駄々を捏ねるように…慈しむように…。
強請って、額へ睫毛へ頬へ…。
そして口唇に…キスを落とすと、彼女から自然と力が抜けていく。
「水美…」
「え、いとさん…」
「可愛い。もっと呼んで」
何時の間にか、土鍋はグツグツと煮えていて、彼女は照れたように笑うと…。
「…も、う………ご飯、食べましょ…?」
と、リビングへと向かってしまった。
色んな戦略を持ってしても。
なかなか堕ちては来てくれない彼女。
大人の余裕は見せていたい。
でも…。
嫌われたく、ないんだろうな。
そう思いついて…なんとなく、納得がいった。