【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
「んじゃまぁ…出掛けますか。エアコン、きつくないか?」
「ちょっと…足元がスースーします」
「ははっ。まぁ、膝丈のワンピースだもんな。ごめんごめん。そしたら…俺の上着、足元に掛けとけよ」
「でも…」
「はいはい。お前は変な遠慮なんかしなくていーの!分かったら、俺の言う事聞く!」
「は、はい…」
彼の香水の香りが、私を少しずつ駄目にする。
そんな小さなことも計画の内?
…分かってやっているのかな…?
彼の本当の…気持ち。
胸の奥を覗く事の出来ない、このジレンマは何時になったら解消されて、綺麗になくなってくれるのか…。
私は彼に見つからないように窓の外を視線を投げて、小さく溜息を吐いた。
車窓に流れるのは、所々雪の残った街並み。
車内には何処かで聞き覚えのある古い洋楽が流れている。
夢、みたいだなぁ…。
目眩が続いているように、ふわふわするからなのか。
それは良く分からなかったけれど、なんとなくそう思った。
確かに今、隣にいるのは愛しいと思う彼であって。
ギアを握る手で優しく手を結ばれているこの状況も、確かに存在するものなのに。
何処か不安定で、何処かが不自然。
「水美…眉間にシワ」
「え、あ…」
「まーた余計な事考えてたろ?」
「い、いえ!そんなことないですもん!」
「ふーん?ムキになる所が怪しいけどな?」
「瑛飛さんの考え過ぎですよー!」
「…そ?ならいーけどな?」
運転をしながら横目で私を見遣って、くくくと笑う彼。
これが貴方の自然体なら…私はそれをちゃんと受け止めてもいいのでしょうか?
こんな、私が?