【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
「これも…和登のお陰…なのかな…?」
ぽつり、彼に聞こえないようにして呟いたのに。
「俺といるのに、別の男の名前なんか呼ぶなよ」
と、耳を軽く引っ張られた。
男の人なんて、信じられなかった。
また、恋が出来るなんて、思わなかった。
そして、自分がこんなに愛されるとも…。
「瑛飛さん、瑛飛さん」
「んー?」
「やっぱり…ピザ食べてからにしよう?」
「…お前ね……」
「だって、お腹空き過ぎて…死んじゃいそうなんだもん」
「んー…まぁ…あれだけ盛大に腹鳴らしてればな…」
「じゃあ、戻ろ?」
「あー…はいはい。その代わり。今日は水美の部屋に泊まらせてもらうからな?」
にやり、と彼は笑う。
私は慌てて首を横に振った。
「だ、だめですよ!そんな事したら…」
「水美、敬語に戻ってる」
「うぅ…だめ、そんなの」
「どうして?」
「だって、私のアパート小さいし…紳士物のしかも、瑛飛さんに似合うような服あるわけないし!」
「あったら嫌だな」
「だ、だから、ないから大変なわけで!」
私からあわあわと慌てれば慌てる程、彼の口角は上がっていく。
「もう!楽しんでるでしょ?!」
「ははは。浮かれてるだけだよ」
「もー!」
こんな、他愛もない日が…ずっと続けばいいのに、と思った。
「瑛飛さんの意地悪!」
「なーんで?こんなに好きなのに?」
「?!」
ゆらゆら揺れる恋の天秤は、苦しいと恋しいの間で忙しく動いて…漸く恋しいの方だけに落ち着いた。
「…嫌いになった?」
「…もー!ばか!…でも、好き!」
「なんだよ、それ」
笑う貴方が好き過ぎて、最早限界の次は何だろう?なんて思ってしまう始末。
「早めに腹ごしらえして、二人きりになろうな」
囁く彼の声がくすぐったくて、身を捩りながらも、やっと自分の心に素直になって、捕まえられた彼の腕に、そして背中に…。
私は、精一杯の愛と一緒に力を込めた…。
この先の展開に、頭がついていかなくなる事なんて、知る由もなく…。