【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
まるで、この次の瞬間、接吻けでもするんじゃないかというくらい、二人の呼吸は合っているような気がする。
その雑誌を買ったのは偶然だった。
そう言えば、好きなモデルさんが表紙だったな…そんなノリでの購入。
「…うん。素敵……」
私はそう答えるも、何処か虚ろげになってしまう。
だって…そのモデルとなっている男性は、他の誰でもない、目の前にいる彼なのだから…。
「いやー…良く撮れてて良かったよ。仕事の片手間とはいえこういうのは慣れないな」
そんな事を口にする割には、彼の機嫌は上々だ。
「ふぅーん?へぇー…………?」
「なに?」
「いーえ。なんでも」
私はつん、と彼に背を向けて彼の脱いだコートを、少しだけ乱暴にハンガーに掛けた。
なんで、こんな思いしなきゃなんないの。
分かっていたことじゃない。
彼は誰もが認める皇帝様。
そのルックスで堕ちない女性はいないだろう。
でも、やっぱりそれを現実として受け止めるのは…私に取ってはちょっと…酷過ぎる。
ー仕事と私どっちが大事なの?ー
なーんて、安っぽい言葉は死んでも口に出来ないし、大体端から言うつもりもない。
「…みーなーみ、こっち向いて?」
「いーや」
さっきからこの繰り返し。
ずっと平行線のまま、ちっとも寄り添えない。