【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
いつもなら、ただのじゃれ合いで時が過ぎていく。
だけど、今夜は少しばかり、方向性が変わりそうだった。
「水美…」
ひくり
色香を滲ませた声色に、思わず体が揺れる。
でも、今はそれに負けたくなんかない。
「瑛飛さんなんか、知らない…」
「なんで?」
「浮気するから」
「してないよ?」
「してるもん」
「………ふぅ」
ふわふわの緩いくせ毛を、かしかしと掻きながら、彼はどうしたもんかと思案している様子。
私は、なんだか収集の付かない感情を持て余して、ぷっくりと頬を膨らませた。
「どうしたら、信じてくれる?」
「………」
「水美、こっち向いて?」
「…もう…瑛飛さんのばか」
ジッと背中に感じる視線に身動ぐと、私はわざと怒ってますよ、という顔で彼の顔を見上げる。
「もしかして…妬いてる?」
「妬いてないもん」
「ほんとに?」
彼はさっきから、テンションがかなり高めだ。
こんな時間まで残業をしてきたというのに…。
「瑛飛さんこそ、なんでそんなに楽しそうなの?」
素直に疑問をぶつけてみると、にんまりとした笑みとちょっぴり恍惚気味の声が返ってきた。
「んー?今の水美が滅茶苦茶可愛いから」
「………なにそれ」
そう言いながらも、抱き締めようと伸ばされる腕から、私は逃れようとはしなかった。
折角繋がった、愛しさという線を…離したくはないから……。
絡めとられるように、巻き付く指先そこにキスを落とされ、自分の器の小ささに泣き出しそうになる。
「瑛飛さんの、ばか」
私はぐるぐる廻る感情に頭がちっとも付いてこなくて、どうしようもなく、不安になって仕方がない。
啄むように、キスをされて気付けば熱に浮かせれたように彼の腕の中に収まる私。
この不安を取り除けるのは、彼だけなのに…。
その手がなければ、一度不安の溝に落ちると…なかなか抜け出す事ができないのに。