【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
ぱしゃり、ぱしゃり…
「もっと、こっちに目線くださーい!」
「はい、ポーズ変えて!いいよいいよー!」
「もっと二人の間詰めて、雰囲気出してー!」
私は、眩い光の応酬に、意識が飛びそうになっていた。
慣れない撮影スタジオは、真っ白い布であちこち覆われていて、目がくらむ。
そこに、聞き慣れないシャッターの、連続する無機質な機械音が耳に響いて、どうにも気持ちが悪い。
それなのに、レフ版の先にいる彼と、相手役のモデルさんは、まるでそんな事は気にならないとばかりに、次々と妖艶な笑みをカメラヘ送り、抱き合って楽しそうにポーズを決めている。
こういう所、苦手だな…。
そうは思うも、「補佐命令」でのこのスタジオ見学は、課長にも認められ…必然的に仕事の一環な訳で…。
「断れば良かった…」
と、後悔しても遅かった…。
「はい!じゃあ、一旦休憩入りまーす」
ぶつぶつと呟きながらも壁を背にして、スタジオの隅っこの方で佇んでいた私の方へ、その言葉を聞いた彼が足早にやって来る。
「なんだ、こんな所にいたのか…もっと近くで見学すればいいのに」
「でも、ちょっとこういう所苦手で…」
「んー?そうだな、顔色悪い…大丈夫か?…この後1時間もしないで終わるから、今日はそのまま直帰しよう…。俺のとこ、おいで。なんか美味いもん作ってやるから」
ぽんぽん
頭を撫でられ、そのままくしゃりと微笑まれた。
あぁ…好き、だなぁ…。
こんなにも愛しく思えるなんて、私は何処か壊れてしまっているのかもしれない。
まさしく、彼の放った魔法に掛けられてしまっているのかも…。
「そんな可愛い顔してると、キスしたくなるから、勘弁してくれよ?」
「っ?!も、もう!」
そこで赤くなる私に、彼は耳打ちをしてきた。
「早く、二人きりになりたい…」
と。