【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
「瑛飛さん……」
「玲香(れいか)から何を聞いた?」
「玲香…?」
「あぁ、今日一緒だったモデルの名前。あいつから…何聞いたんだ?」
会話に、私以外の女性の名前が出て来ただけで、こんなにもイライラする。
「…別に何も」
「水美、言ってくれなきゃ分からないから」
「瑛飛さんには、分からないですよ」
「…やっぱり、会おう。じゃないと話にならない」
焦れたような、声。
少し怒りを含んでいる。
それでも、私は言葉を止める事が出来ない。
「…私の事、からかってて楽しいですか?」
「そんな訳ないだろう?」
「…………」
「…はぁ。水美、まずは落ち着けよ」
「十分落ち着いてます」
「……分かった。じゃあ、このままでいい。このまま話そう。お前の気持ちをちゃんと知りたい」
至って真面目な回答に、思わず顔が綻んでしまいそうなのを、慌てて引き締める。
彼の声を聞けば聞く程、イライラとそれとは真逆の、言いようのない愛しさが湧いてくるんだから、不思議でならなかった。
「…じゃあ、どこから聞きたい?」
「全部」
間髪入れずにそう言うと、くすり、と向こうで彼が笑った。
「全部、ねぇ?もう殆ど水美は知ってるよ。格好つけで見栄っ張りで俺様で、何より冷たい…だろ?」
「うそつき。本当は全然違う癖に…」
「…なんだ。やっぱり水美の方が俺の事ちゃんと分かってるじゃないか…」
どことなく、楽しそうに囁く彼の声は、いつものトーンに戻っている。
私もそれにつられてしまう。