【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜

「少しずつ少しずつ、だけど。彼との心の距離は縮んでるんだよ?これでも…ね?」


ー偶に自信無くなっちゃうんだけどね…ー


そう、くしゃり、と微笑んだ。


「ねぇ、彩良ちゃん?」

「はい?」

「好きな人が、今より遠くに行ったら…どうする?」


真っ直ぐな瞳。
私は一瞬口に頬張っていたパスタをごきゅりと飲み込んでから、考える。


「……遠くに、ですか?」

「うん」

「私なら、泣くかなぁ…」

「そうなの?」

「多分、行かないでとか言っちゃうかも…私これでも彼氏に対して構ってちゃんなんですよ」


そう言うと、センパイハフット柔らかく微笑んで、 


「そっか…」


と、一言呟いた。


危う気な所がまた、センパイの魅力を引き立たせていて、そんなセンパイを見ていると、なんとなく、


「大人の女性」ってのがこういうもんなのか、と納得出来てしまう。


「あ!そうだ…最近補佐宛のお客さま多いですよね?あれ、どうしてなんですか?」


ずっと胸に引っかかっていた疑問を、センパイにぶつけてみる。
すると、センパイは曖昧にふふふと笑って、


「その内分かるよ」


と、だけ言った。


なんだか、胸の中がモヤモヤして仕方がない。
なんだろう?
この嫌な予感は?
でも、嫌な予感と一緒に押し寄せてくる、言いようのない感情の方が圧倒的に多い所が、不思議で不思議で仕方がなかった。


私はもう一度、センパイの方を見て、ハッキリと言った。


「センパイ?何かあったら…絶対言ってくださいよ?」


それは縋るような声になってしまう。
そんな私を気遣ってか、センパイはくすり、と微笑んでから、


「ありがとう」


と言ってくれた。

< 155 / 216 >

この作品をシェア

pagetop