【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
「少しずつ少しずつ、だけど。彼との心の距離は縮んでるんだよ?これでも…ね?」
ー偶に自信無くなっちゃうんだけどね…ー
そう、くしゃり、と微笑んだ。
「ねぇ、彩良ちゃん?」
「はい?」
「好きな人が、今より遠くに行ったら…どうする?」
真っ直ぐな瞳。
私は一瞬口に頬張っていたパスタをごきゅりと飲み込んでから、考える。
「……遠くに、ですか?」
「うん」
「私なら、泣くかなぁ…」
「そうなの?」
「多分、行かないでとか言っちゃうかも…私これでも彼氏に対して構ってちゃんなんですよ」
そう言うと、センパイハフット柔らかく微笑んで、
「そっか…」
と、一言呟いた。
危う気な所がまた、センパイの魅力を引き立たせていて、そんなセンパイを見ていると、なんとなく、
「大人の女性」ってのがこういうもんなのか、と納得出来てしまう。
「あ!そうだ…最近補佐宛のお客さま多いですよね?あれ、どうしてなんですか?」
ずっと胸に引っかかっていた疑問を、センパイにぶつけてみる。
すると、センパイは曖昧にふふふと笑って、
「その内分かるよ」
と、だけ言った。
なんだか、胸の中がモヤモヤして仕方がない。
なんだろう?
この嫌な予感は?
でも、嫌な予感と一緒に押し寄せてくる、言いようのない感情の方が圧倒的に多い所が、不思議で不思議で仕方がなかった。
私はもう一度、センパイの方を見て、ハッキリと言った。
「センパイ?何かあったら…絶対言ってくださいよ?」
それは縋るような声になってしまう。
そんな私を気遣ってか、センパイはくすり、と微笑んでから、
「ありがとう」
と言ってくれた。