【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜


でもその前に。

現在の問題は…。


テーブルに頬杖を付いて、私の事をからかってくる手はとても優しいけれど…。
投げて来る視線は、獰猛な獣のように光っていて、ゾクリと背中がしなった。


この人が何を考えているのか…全然分からない。

ただ、言えるのは。
私が、もう既に彼に堕ちている事。
私の気持ちが…彼に滅茶苦茶に支配されるくらいに愛されたいと…そう望んでいる事。


「さ、そろそろ皆来るから…そんなかわいい顔、誰にも見せないように、席に戻んな。ほら、ガムやる」

「だ、誰かさせたんですかっ!」

「ん…?何?…俺なの?俺のせい?んじゃぁ…責任取らないとな」

「んな、ちょ…っ」


かちゃん、デスクチェアが揺れる。
気が付いたら、彼の腕の中。
すぐに解けるくらいの、優しいハグ。


私は、それだけでおかしくなってしまいそうだった。


「久倉って、無防備だよな…それ、素なの?」

「…っ。や…っ」


耳元にダイレクトに流れ込んで来る、甘い低音ボイス。
それに、びくびくと体が勝手に揺れてしまう。
その私の反応に、彼は楽しそうに続けた。


「んー?やなの?」

「い、や…っ」

「うーそーだろ?だって、久倉…全然抵抗してないじゃん?」

「っ…!」


ハッと我に返ると、彼は私の体を柔く拘束するのも止めていて…。

必然的に、私が彼に…しなだれて…抱き付いているような格好になっていた。


私は羞恥に涙目になって、少しだけ乱れたスーツを直した。


「補佐のばか!」

「んー。いいね。そういう反応されると逆に燃える」

「詐欺!」

「なーんで?俺は俺だろ?」



もう、ぶつけられる言葉が無くて、悔しさに口唇を噛む。
そうすると、その口元を指でなぞられて、


「血、出るからやめとけ」


と、静かに窘めなれた。

この人の、何を考えているのか分からない所も、含めて好きなんだと思ってしまう自分の感覚が、分からない。

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