【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
「ほ、補佐?」
「んー?」
「あの…?」
「なんだー?」
「近くない、ですか?」
それは、補佐のパソコンの前。
社員でも数人しか知らないデータベースが入っているとは言え…。
この、後ろから抱っこ状態を、どう対処したらいいものか…?
だから、私は小さく抗議する。
すると、彼は片手でカタカタとキーパンチしながら、少しだけムッとしたように、私の髪をくしゃくしゃにしていく。
「あぁ?仕方無いだろー?データベース入ってるパソコン、ここにゃ1台しかないんだから…なに?それとも…意識しちゃってんの?」
「んなっ?!」
「くくく。うそうそ。ほんとは悪いと思ってるよ。こんな窮屈な思いさせて、さ」
「ううう…」
その整いまくった顔でニッカリ微笑まれると、何も反論出来なくなる…という事に、この人は気付いてるのか…。
「…なに?」
「なんでもないです。じゃ、こっちの資料なんですけど…」
さらりと前の方へ落ちてきた髪を、耳に掛けると距離が近いせいか、そこに彼の息が少しだけ掛かった。
やばいんですけども…。
この、今まで感じた事のない全身が粟立つような感覚。
思考が麻痺していくみたいで、凄く怖い…。
「そんな、警戒すんなって…。何もしないって言ったろ?」
少し通常ではない声。
セクシャルに掠れて、まるで求められているような…。
そこから、彼の欲望が垣間見えたような、そんな気がした。
私は身じろぐ。
それを、彼に窘められた。