【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
「だってさ、こんな事愛未にしか言えないじゃない〜」
私が、上目使いで申し訳無さそうにそう返すと、愛未はしょうがないなぁと呟いて、手にしているグラスをゆらゆらと揺らした。
そうする事でこちらまで漂うのは赤ワインの深みのある香り。
そこそこ飲めるわたしでも、その香りに酔ってしまいそうなくらい、濃い香りだった。
「愛未はいいなぁ…榎本くんと上手く行ってるんでしょ?」
「んー…まぁね。彼は、放っておけないタイプだから」
くすくす、と笑う愛未の彼氏は、私の後輩の榎本秋楓(えのもとかえで)くん。
営業に所属している愛未の彼氏。
入社2年目しにて、バリバリのエリートの癖に…どこか抜けてる榎本くんは、とても一途で献身的に愛未に愛情を注ぐ、所謂クリーミー系男子。
その名の通り、甘い外見とは違った、しっかりしている性格。そして…優しさは常にたっぷりな標準装備。
「羨ましいなー…」
「何言ってんの。あんな大物好きな癖して」
「うう…」
「水美はさ、自信無さ過ぎよ?」
「そんなことないよ?」
「あるんだって。もー…過去の男遍歴さえなきゃ、こうも意固地にならなかっただろうに…」
「……そう、なのかな…?」
「ダメンズの次はハイスペ、それくらいの気持ちでいないと、潰れるって」
ふふん、と笑って愛未はグラスに口を付けた。