【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
「…ふぅ…」
もう一度小さく溜息を吐いてから髪を掻きあげ、バッグに仕舞ってあったノートパソコンを取り出すと、俺はすぐにそれを立ち上げて、家で仕上げて来た打ち合わせに使う資料のプリントアウトを行った。
そして、そのまま一番近い第三会議室に向かう。
「えー…で、これらの情報を軸にして、この新商品の開発を進めていくから…丹下、プロジェクター画面切り替えて」
「はい!」
「えー、主成分をこの配分にすると、肌への負担がかなり少ないという事がパッチテストの結果出た。なので、製造の方にこのままデータを流して、試作品を作るよう指示するが…何か意見ある奴いるか?」
プロジェクターから映し出された画像に、ポインターで丸やらチェックなどのジェスチャーを加え、一通りの説明をする。
それに齧り付くようにして、説明を聞くメンバーたち。
「ないなら、次の…」
「あの…」
「ん?久倉?どうした?」
「このパッチテストは、大体何名から取った統計ですか?」
「…あぁ、佐々木、そこの資料取って」
「あ、はい!」
「えーと、データ、データっと…」
パラパラと、前の段階の資料を手に取って、データの書いてあるページを探す。
気のせいか、周りの緊張感が増したような気がした。
「あぁ、そうだな…一応、十代から5歳ごとに100人単位だな…」
「…なるほど…」
「それがどうした?」
「いえ、十代と三十代では肌質が変わってくると思うので、此処はターゲットを世代別ではなく、一世代に絞ってみては如何でしょうか?」
「ふむ…なるほどな…」
「あと、このリップについてなんですけども…ティントリップとしての発売は可能ですか?」
「……なるほど…そうか。そういう意見もあり、だな」
彼女の仕事に対する姿勢は、他のメンバーにも見習って欲しい部分が多々ある。
勿論、好きだという気持ちを除いて、だ。
「分かった。そういう面も考慮して、展開して行こう。久倉、貴重な意見をありがとう」
「いえ…此方こそありがとうございます…」
一気に言葉を発したせいか、少し蒸気した頬。
皆がいなけりゃ、今すぐにでも掻き抱くのに…。
そんな不埒な事を思ってから、咳払いをする。
「…こほん。じゃあ、とりあえずこの案件は今日中に俺が纏めておく。他の商品については皆で詰めてくれ」
「はい!」
威勢のいい課員の声を耳にして、俺は機嫌良く会議室を出た。