【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜


仕事がスムーズに行く事は、誰でも嬉しいもんだ。
それが、自分が育ててきたメンバー達の頑張りから来るものならば、尚更。


やっぱり、仕事は楽しい。
俺はこの仕事に心から誇りを持っている。
上から叩かれ、叩かれまくって…気持ちがボコボコになってしまった日もあった。

でも、諦められなかった。
絶対に、見返してやろうと心に誓っていた。
何もかもが、がむしゃらでしかなかった…。

開発部の課長補佐まで上り詰めた今、漸く肩の力が抜けて、落ち着く事が出来たから、余計なのかもしれない。


…自分以外の誰かの事を、きちんと考えられるようになったのは。


「久倉がー…あー…たらねぇ…」

「あーあー…大原補佐、病んでますね」

「なんだよ、神田かよ」

「嫌そうに韻踏まないでくださいよー」

「なに?お前、なんか俺に用?」


落ちてきた前髪を指で弾きながら、気怠そうに会話を進めると、神田はニヤニヤと笑って俺の肘を突いてくる。


「水美センパイ、ほんとに無敵ですよねぇ?ねぇ?大原補佐?」

「うるせぇよ。からかいに来たならおとといきな」

「えー?じゃあ、そんな事言う人にはセンパイの情報流しませーん」

「なんだとー?」

神田は、俺の反応を見て、滅茶苦茶楽しそうだ。
そりゃそうだろう。
鬼軍曹の、一番の弱みなんだから。


「……何も出ねぇぞ?」

「いりませんよ」

「は?」

「大原補佐、何気に自分で思ってる程鬼じゃないですもん。無茶ぶりしたり、責任押し付けたりとかないですし。水美センパイの件もあって、更にそうなりましたしね。私、そういう所、尊敬してますから」

「…お前ねぇ?めっちゃくちゃ楽しんでんだろ?この状況?」

「えへへ…分かりますー?」


まさか、こいつにこんな風に言われるとは…。
俺は、そこまで分かり易くなってんのか。


「…で?その情報って?」

「水美センパイ、営業部の石毛さんに言い寄られてますよ?」

「なに?!」

「まぁ、水美センパイは完全スルーですけどね」

「…はぁ」

「そろそろ、補佐の本領発揮してもらわないと…」


そこで、神田は明るいピンクベージュ色のスカートをふわりとなびかせて、こちらを向いた。

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