【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
「はぁー……」
私はエレベーターを降りて、エントランスに到着すると、雪降りしきる中、駅へと歩き出した。
てくてく、きしきし
少しずつ積もって行く雪を、所々で踏み締めては、なんとなくワクワクする気持ちが沸いてきた。
さっきまでは、仕事と彼の事でいっぱいだったのに…。
だけど、現実は実に厳しい。
駅までの道のりを、鼻の頭を赤くする程の寒さを凌いでやって来たというのに…。
「うそ…」
電車の全線運休の電光掲示板を見て、私は絶句した。
駅には人が溢れかえり、時折怒号さえも聞こえて来る。
「うー……これは、仕方ない、よね?」
私は弱々しくそう呟くと、悴む手を擦り合わせながら、会社へとUターンする事にした。
こんな極寒地にいて風邪を引くよりも、会社で仕事をこなしていた方が断然良いに決まってる。
「不可抗力!不可抗力!」
きっと、この状況を説明しなければ、彼は早く帰れともう一度言って、怒るかもしれない。
でも、こればっかりは自分の力ではどうにもならない事だから。
私はそうひたすら呟いて、自分を納得させると駅から会社へと戻って行った。
途中のカフェで、まだ残ってるだろう課のメンバーへの差し入れのベーグルサンドを買ってから。