【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
確か、私は自分の席にいた筈なのに。
そして、多分そのまま意識を飛ばしていた筈なのに。
なんだろう、この暖かさは…?
そう思って、すり、と身を寄せてしまったのが間違いだったのかもしれない。
「水美…」
「…………え!」
「ばぁか。そんな大声出すな。耳が割れる」
「え、え、え?!だ、だって、だって…?!」
私の声が余程キンキンに響くのか、彼は片耳を抑えて私に話し掛ける。
「落ち着けよ。大丈夫だから」
ぽんぽん
頭を撫でられ、落ち着こうとするけれど、今のこの状況ではそんな事は出来ない。
「なんで、私、此処に?」
「んー?そりゃ電車が動かなかったからだろ?」
「いやいや!そうじゃなくてっ!今、今です!」
「今?」
「……なんで、私……補佐に抱き抱えられてるんでしょーか……」
「あー…これな。これはぁ、不可抗力?」
「!?そんな訳ないっ!て、ひゃあっ!」
応接室のソファーの上で、後ろから抱っこされた形でホールドされている私には、彼のスーツの上着が掛けられていて。
その爽やかな香水の香りに、身動きが取れなかった。
その隙を突いて、彼は私のうなじ辺りに口唇を押し付けてくる。
「なんつー色気のない声出してんの?何時もみたいに、可愛い声、聞かせろよ?」
「周りが誤解するような事言わないで下さいよ!」
カァァッと熱が頬に集まる。
そう叫んだ私に、死刑宣告のような一言が返って来た。