【完】溺愛恋愛マイスターにぞっこん?! 〜仔猫なハニーの恋愛奮闘記〜
「へ?!あ、あの」
「ん、いっておいで」
…。
まただ。
私はどうやら、この人のこの口調に滅法弱いらしい。
小さく唸るようにして「はい」と返事をすると、囚われの身となった私は彼女に連れられて、今度こそ奥にあるフィッティングルームに向かった。
「ふふ、お名前は?」
「……あ、申し遅れました!私、久倉水美と申します」
妖艶とも言える、その微笑みは男性でなくても、見惚れてしまう程綺麗で、一瞬返事をするのが遅くなってしまった。
それでも、そんな事は気にならないようで、彼女はにこにこと微笑みながら自己紹介をしてくれる。
「私は櫻井多英(さくらいたえ)です。ここのオーナーをしております。大原様にこんなに可愛らしいお相手がいらっしゃったなんて、びっくりですよ?」
「えぇ?!…あ、いえ、その…」
「あら?そうじゃないんですか?大原様が此方へ女性をお連れするのは初めてでしたので、つい…」
「え?!」
「くすくすくす…」
そんな会話の間も、彼女はテキパキと私に似合うであろう服を手に取り、合わせていく。